「エンジンの仕組みとメンテナンスの研修」および「無線機・GPS・魚群探知機等の仕組みと使用方法の研修」

 「エンジン」や「無線機等」の仕組みと使い方・点検方法を習得することは,「安全な操業」や「効率的な操業」に欠かせません。これらは,今後のインターンシップの期間中にも学んでいくと思われますが,その前に,基礎的な部分をあらかじめ学んでおくべき,という考えで研修を実施しました。

エンジンについては阿波ヤンマー株式会社さんのご協力の下,9月21日に研修を実施しました。研修生にとって,このように陸にあげられた実機を見るのは初めてであり,その構造を理解するのに大いに役立ちました。

無線機等の研修は,フルノ関西販売株式会社さんに御協力いただき,9月22日に実施しました。無線機,GPSプロッター,レーダー,魚群探知機,ソナーなどの実機をご用意いただき,デモ画面を用いながら,操作方法を学びました。こちらについても,これらの機器に一度に触れる機会は初めてで,興味深く学ぶことができました。

阿波ヤンマー株式会社,フルノ関西販売株式会社の皆様,ありがとうございました。

水産物の消費拡大について その6 漁業協同組合による消費拡大の取組【小松島漁協の事例】

 いろいろな主体が実施している「水産物の消費拡大」の取組。今回は「漁業協同組合が行っているもの」として,9月14日に,小松島漁業協同組合の事例を現地で学びました。
 小松島漁業協同組合では,漁業者はその漁獲物を,「漁業協同組合に出荷(漁協が出荷先を決定)」「漁業協同組合の運営する市場に出荷」「個人で他の市場等に出荷」の3パターンで出荷します。



「漁業協同組合の運営する市場に出荷」された魚介類

こちらが「小松島漁協魚市場」。もともとは,現在の「徳島市中央卸売市場」と同様に,小松島市や周辺の魚屋さんへ魚介類を提供する「消費地市場」の役割を担っていました。その頃は,地元の魚介類のほか,他県産の魚介類(マグロ,鮭など)もセリにかけられていました(他県産魚介類も船で運ばれてきていました)。しかし,交通網の発達により,「消費地市場」の役割の大部分は,「徳島市中央卸売市場」にとってかわられ,現在は地元の魚介類を中心にセリが行われています(現在でも地元産以外の魚介類が全くゼロというわけではありません)。

今では,仲買業者にセリ落とされた「地元産魚介類」を,その場で個人が仲買業者から購入できるシステムを取り入れいます。その結果「産直」の機能を有することとなり,「地産地消による水産物の消費拡大」を行っています。



「漁業協同組合に出荷(漁協が出荷先を決定)」された魚介類

これらは,漁協が出荷先(首都圏,関西,徳島など)を決定します。小松島漁協の場合,自ら活魚輸送車を保有し,消費地に出荷します。特に「ハモ」については,その消費拡大に力を入れており,活魚輸送車もハモをアピールしたものとなっています。なお,ハモは,「小松島市推奨の魚」にもなっています。

さらに,ハモの一部については,漁協で骨切,凍結などの加工をし,販売しています。写真の「ハモの骨切機」の導入により,可能となりました。

このように骨切りされたハモは,通信販売により全国各地で消費されるほか,地元の給食にも用いられ,「食育」の一端も担っています。水産物の消費拡大のためには「子供のころから魚に親しむ」ことが重要と言われています。



小松島漁協のホームページはこちらです。

「魚介類の鮮度保持技術と活け〆の科学」

 魚の価格は,漁獲後の「取り扱い」により,大きくかわります。「活魚」の場合は,「少しでも長く活きている」,「〆て」出荷する場合は,「死後硬直までの時間(この時の魚の状態を「活かっている(いかっている)」と呼ぶこともあります)を少しでも長くする」,などが求められています。漁業者も,そのようなニーズに合わせた「鮮度保持」の知識と技術を習得しておく必要があります。
 そんな観点から,9月8日に,水産研究課美波庁舎において,水産研究課の上田課長を講師に,「魚介類の鮮度保持技術と活け〆の科学」の研修を実施しました。

まずは,徳島の海や水産業の概略についてのレビュー,次いで「活け〆の方法」「その後の保管方法(保管温度など)」による身の質の変化の違い,先進地事例についての講義を受けました。

その後,最近各地で行われている「神経〆」の実習。例えば京都市場では,活魚で搬入されたハモについて,(活魚で流通させる以外のものは)セリにかける前に市場の職員さんが「神経〆」を行っているそうです。
実習に用いたのは「クロアナゴ」。まず氷により低温にした海水に投入。動きを鈍くさせます(この段階ではまだ生きています)。

次に,頭部と尾部に包丁を入れ血抜き。この段階で魚は絶命します。

最後に,細い針金を,脊椎骨に沿ってある「神経が通っている穴」に差し込み,神経をつぶします(これが「神経〆」)。針金が入ると,(死んでいるにもかかわらず)魚体がぐねぐねと動きます。この動きがなくなったらOK。「ぐねぐね」と動かない場合は,正しく「神経が通っている穴」に針金が入っていない,つまり「神経〆」ができていないことになります。

今度は,保管方法についての実験。〆た魚を,「大量の氷を入れたスチロール箱に投入」「直接魚体に氷が接しないように新聞紙等で包んだ氷を入れたスチロール箱に投入」の2種類の方法で保管してみました(写真は後者のものです)。前者の方が低温となっています。今回はこのまま3~4時間経過させました。


他の魚でも「神経〆」の練習をしました。頭を落とすことができない場合は,目と目の間付近に小さな穴をあけ,そこから針金を差し込みます。

 さて,先ほどの「クロアナゴ」ですが,「直接魚体に氷が接しないように新聞紙等で包んだ氷を入れたスチロール箱に投入」したものは,まだ「活かっている」状態でしたが,「大量の氷を入れたスチロール箱に投入」したものは,死後硬直が始まっていました。

 素人考えでは,「なるべく冷やした方が品質が良いだろう」と考えがちですが,「死後硬直までの時間を長くする」ためには,冷やしすぎは良くないという結果になりました。

(これは,あくまで「死後硬直まで」の品質保持についての結果です。死後硬直後,硬直が解けて最終的に腐敗に至るまでの過程では,また別の結果となりますので,くれぐれもご注意ください)。

水産物の消費拡大について その5 和食以外の魚料理とSNS活用による情報発信を学ぶ

 「魚料理」というと,多くの方は「和食」「ごはん」を思い浮かべると思います。平成25年12月「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され,また2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催され,それを契機に「和食」がより広がる可能性も指摘されています。しかし,一方,長いスパンで見ると米の消費量は減少傾向にあります。
 漁業者自らが水産物の消費拡大を図るとき,「魚料理教室」という手段は有効ですが,現状では多くの場合「和食」系メニューとなっているようです。そこで,今回は,今後研修生が料理教室を開催したり講師になったりする時に備え,和食以外の料理として,「イタリアン」を学びました。講師は,阿波ふうどスペシャリストの,大杉まや さんにお願いしました。(大杉まやさんのfacebookはこちらです)


まずは大杉先生から,本日の内容の説明。

用いた魚介類は,まず,イサキ。研修生は今まで何度も魚を捌いているので,下処理はお手のものです。大杉先生も驚いておられました。
それとタチウオ。

それぞれ分担して調理を進めます。

魚介類以外に,レンコンやオクラも用いて。ハーブがさりげなくあるところが,イタリアンっぽい?

お皿に盛りつけて。。。

一品目完成

二品目も完成

 出来上がったお料理は,皆さんで美味しくいただきました。終了。。。ではなく,この後は引き続いて,(株)カンマンよりウエブデザイナー,プランナーの小川裕司さんを講師に迎え,SNS活用による情報発信の講義に。
 まずは,作った料理を被写体にして,インスタ映えする写真の撮影方法を学んだあと,いかに個人発信の情報をSNSを用いて拡散させていくか,のテクニックなどについて,講義を受けました。


 水産物消費拡大の取組みは,いろいろな主体が行っていますが,今後は,漁業者個人も自ら積極的に取り組んでいく必要があるのではないか,との観点から,今回はその一手段として「(和食ではない)料理教室」と「情報発信」の研修を実施しました。

水産物の消費拡大について その4 未利用資源の有効活用事例【徳島県立徳島科学技術高等学校の取組を学ぶ】

 8月29日は,徳島科学技術高校の服部和幸先生と3年生の井原卯捺さんほかの方々を講師に招き,「未利用資源の有効活用事例」を学びました。場所は,再び水産研究課美波庁舎6次産業化研究室です。
 徳島科学技術高校海洋技術類海洋総合コースでは,過去より,未利用水産物の利用促進に取り組んできておられます。

まずは,ワカメメカブ,スダチ果皮,レンコン節部,おからなどの「未利用資源」を,「機能性微粉末」や「顆粒状食品」に加工する取り組みについて,説明を受けました。

 こちらは,ワカメ茎の入った「練り製品」。練り製品は,魚のすり身を用いるのですが,これはそれに「おから」を加えることで,「おから」の有効利用を図っているものです。試食してみましたが,味は非常によく,すぐにでも商品化できそうな印象を受けました。

続いて,未利用水産物を用いた「レトルト食品」の作成にうつります。これは材料のウツボ。ウツボは,干物や珍味として,また最近は「ウツボのたたき」などとして利用されていますが,それでもまだ利用率は低いと考えられます。

こちらはクロアナゴ。漁獲されても多くは投棄されます。

下処理方法は,ウツボもクロアナゴも同じ。まずは塩で体表のぬめりをとったのち,頭と内臓を除去。

丁寧に水洗いし。。。。

筒切り。

今回は「水煮」と「大和煮」を作成。それぞれの調味液にしばらくの間漬け込みます。

漬け込んだ切り身をレトルトパウチ容器に入れていきます。

真空パッキングをしたら,先日も使った「レトルト食品用オートクレーブ」にセット。加圧加熱殺菌を行います。実は,この「加圧加熱」が,殺菌のみならず「調理」の手段にもなっています。

パック表面の水分をふき取って無事完成。

 その後,試食および意見交換をしました。

 少々「魚くさい」と感じられるものもありました。これは,「食べる前に自分の好みに味付けする」ことを前提にして,あえて薄味に調味していることにも関係しているようです。ただ,「レトルトパウチ食品は,簡単に食べることができることが『売り』なのであるから,開封してお皿に載せるだけで1品となるように,あらかじめしっかりと味付けをしておくべき」との意見もありました。

 ウツボとクロアナゴは小骨が多く,それが未利用となっている大きな原因ですが,それについては,加圧加熱処理により,全く気にならない状態になっていました。魚の中骨(だけ)の缶詰がありますが,それと同じようなレトルトパウチ食品を開発してはどうか,との意見もありました。こちらについては,骨だけにした場合,容器に真空包装する際に,骨が容器を突き破ってしまうという問題があるそうです。

 未利用資源の有効活用は,試作→改善→試作→改善の繰り返しになります。平成29年3月に整備された水産研究課美波庁舎6次産業化研究室を核として,いろいろな分野の関係者が,それぞれの情報を持ち寄り,一緒に考え進めていくことが重要であると感じた,今回の研修でした。

水産物の消費拡大について その3 水産研究課美波庁舎6次産業化研究室

 水産物の消費拡大の1つの手段として「加工する」ということが挙げられます。従来,徳島県内において,漁業者や漁業協同組合が,実験的に水産物を加工しようとしても,公的な施設はありませんでした。しかし,平成29年3月に,水産研究課美波庁舎内に「6次産業化研究室」が整備され,水産物の加工品の試作が手軽にできるようになりました。
 研修生が将来漁業者となった際には,収入アップのため漁獲物を自ら加工して販売する可能性もあり,その際この「6次産業化研究室」の活用も考えられることから,8月24日~25日に「6次産業化研究室」で各種加工機器の使用法を学ぶ研修を行いました。



【干物加工編】
とりあえず様々な魚を干物にしてみることにしました。
これはシマイサギとガンゾウビラメ。

アイゴとフエフキダイ(の仲間)とキダイ(の仲間)
アイゴは海藻類を食害し,磯焼けの原因種の1つともされているので,どんどん食べていただきたい魚です。

メダイ(大きい方)とワキヤハタ(かオオメハタ)。
メダイはあまり馴染みのない魚ですが,特に関東では重宝されます。海部郡沖にも生息しており,今後期待のもたれる漁業資源です。

ワニゴチ。干物にするために片っ端から処理していきます。
アイゴは背鰭・腹鰭・臀鰭の棘に毒をもち,死んでからでも刺されると非常に痛みます。そこでまずそれらを切り離してから,処理します。

その後塩水につけてから干物に加工へ。写真の後ろに見えている「冷風乾燥機」にセットし,翌日までかけて乾燥させます。
で,翌日。おいしそうに出来上がりました。この後,最近はやりの「スチームコンベクションオーブン」で焼いて試食しました。



【イカ飯編】

小型のイカともち米から「レトルトのイカ飯」を作ってみました。イカの胴にもち米を詰めます。

「真空包装機」を用いて,専用の袋に真空包装。

それを「レトルト食品用オートクレーブ」にセット。この機械では,1気圧以上の高圧で加熱することにより,食品を100℃以上(例えば120℃)に保つことができます(1気圧で120℃にすると,水は沸騰し気体になってしまいますが,この機械では液体のままです)。これにより,十分な殺菌に必要な温度が確保でき(「加圧加熱殺菌」といいます),レトルト食品ができる,というわけです。

無事出来上がりました。これももちろん試食しました。

 なお,ここでは「レトルト(食品)」と表示していますが,商品に「レトルトパウチ食品」と表記するには,いろいろな「きまり」(例えば「容器は遮光性を有していなければならない」など)がありますので,ご注意ください。



 今回の研修では,水産研究課美波庁舎6次産業化研究室に設置されている全ての機器,「冷風乾燥機」「スチームコンベクションオーブン」「真空包装機」「レトルト食品用オートクレーブ」の使い方を学ぶことができました。
 これらの機器は,6次産業化を進める漁業者の方や水産加工業者の方の商品開発試験等にお使いいただけます。詳細はこちらをご覧ください。

【阿南高専との連携講座】「マリンドローン」及び「LED集魚灯」について

 先日の徳島大学に引き続き,今回(8月23日)は阿南工業高等専門学校との連携講座です。テーマは「マリンドローンの技術的背景と漁業利用法」「LED集魚灯の技術的背景と漁業利用法」の2つ。



 まずは「マリンドローン」について。
 最近ドローンについての技術開発が進み,いろいろな分野での活用がなされているところです。阿南高専においては,藻場調査の簡易化のため,その調査(環境モニタリング)に用いることのできる,着水可能で撮影や採水もできる「マリンドローン」を開発しています。

まずはドローンがディスプレイされている部屋で,ドローンについての講義。

阿南高専の学生さんから,ドローンを制御するコンピュータプログラムについて学んでいます。

まずは室内で小型のドローンを飛ばしてみることに。タブレットが操作パネルです。

室内を飛行中のドローン。

次いで,屋外でより大型のドローンを飛ばします。本来の意味での「ドローン」は,飛行プログラムを設定し,本体にある加速度,気圧,GPSその他のセンサーにより,定められたルートを自動で飛行するものだそうです。

あらかじめプログラムされたルートに基づき自動で飛行中のドローン。

もちろん操作パネルで制御することもできます。



 午後からはLED集魚灯についての講義と実習。
 「集魚灯」と聞くと,イカ釣り漁船などで用いられる大型のもの(海岸からは「漁火」として見えます)が代表的ですが,仕掛けの途中に組み込むことで漁獲効率をあげる小型(数センチ程度)の「集魚灯」もあります。
 LED集魚灯は,特定の波長のみを出すことができること,明滅させやすいこと,などの理由により,より効果的な漁獲が期待されています。そのためには,魚の側の光に対する反応を知ることも必須であり,阿南高専ではその実験も行っていることを学びました。
 その後,小型集魚灯を実際に作成してみました。



 最後には,本日学んだドローンや集魚灯について,今後漁業にどのように応用できるかについて,議論しました。研修生から出たアイデアの一部を紹介します。

【ドローン】
・モジャコ漁における「流れ藻」の探索
・荒天時に設置漁具の様子の確認(流失していないか,など)
・密漁対策(牽制効果)
【LED】
・魚介類の誘導(漁獲対象種は集め,それ以外のものは忌避させる)