「魚介類の鮮度保持技術と活け〆の科学」

 魚の価格は,漁獲後の「取り扱い」により,大きくかわります。「活魚」の場合は,「少しでも長く活きている」,「〆て」出荷する場合は,「死後硬直までの時間(この時の魚の状態を「活かっている(いかっている)」と呼ぶこともあります)を少しでも長くする」,などが求められています。漁業者も,そのようなニーズに合わせた「鮮度保持」の知識と技術を習得しておく必要があります。
 そんな観点から,9月8日に,水産研究課美波庁舎において,水産研究課の上田課長を講師に,「魚介類の鮮度保持技術と活け〆の科学」の研修を実施しました。

まずは,徳島の海や水産業の概略についてのレビュー,次いで「活け〆の方法」「その後の保管方法(保管温度など)」による身の質の変化の違い,先進地事例についての講義を受けました。

その後,最近各地で行われている「神経〆」の実習。例えば京都市場では,活魚で搬入されたハモについて,(活魚で流通させる以外のものは)セリにかける前に市場の職員さんが「神経〆」を行っているそうです。
実習に用いたのは「クロアナゴ」。まず氷により低温にした海水に投入。動きを鈍くさせます(この段階ではまだ生きています)。

次に,頭部と尾部に包丁を入れ血抜き。この段階で魚は絶命します。

最後に,細い針金を,脊椎骨に沿ってある「神経が通っている穴」に差し込み,神経をつぶします(これが「神経〆」)。針金が入ると,(死んでいるにもかかわらず)魚体がぐねぐねと動きます。この動きがなくなったらOK。「ぐねぐね」と動かない場合は,正しく「神経が通っている穴」に針金が入っていない,つまり「神経〆」ができていないことになります。

今度は,保管方法についての実験。〆た魚を,「大量の氷を入れたスチロール箱に投入」「直接魚体に氷が接しないように新聞紙等で包んだ氷を入れたスチロール箱に投入」の2種類の方法で保管してみました(写真は後者のものです)。前者の方が低温となっています。今回はこのまま3~4時間経過させました。


他の魚でも「神経〆」の練習をしました。頭を落とすことができない場合は,目と目の間付近に小さな穴をあけ,そこから針金を差し込みます。

 さて,先ほどの「クロアナゴ」ですが,「直接魚体に氷が接しないように新聞紙等で包んだ氷を入れたスチロール箱に投入」したものは,まだ「活かっている」状態でしたが,「大量の氷を入れたスチロール箱に投入」したものは,死後硬直が始まっていました。

 素人考えでは,「なるべく冷やした方が品質が良いだろう」と考えがちですが,「死後硬直までの時間を長くする」ためには,冷やしすぎは良くないという結果になりました。

(これは,あくまで「死後硬直まで」の品質保持についての結果です。死後硬直後,硬直が解けて最終的に腐敗に至るまでの過程では,また別の結果となりますので,くれぐれもご注意ください)。