令和6年11月の漁業アカデミー

      令和6年11

 11月に入りました。ようやく暑さも和らぎ、日によっては秋を通り越し一気に冬の様相を呈するようになってきました。研修生は親方についてのインターンシップ研修が2カ月目に入り、本格的に現場での漁業研修をこなしています。今月はオープンキャンパス、フェア、セミナー等様々なイベントも実施されました。


〇ブルーカーボン推進セミナー(11/16)

 場 所:四国大学 共通講義棟1F大講義室(徳島市応神町)
 日 時:令和6年11月16日(土)13~16時

 県水産研究課主催で実施されたブルーカーボン推進セミナーに、事務局のほか研修生1名及び卒業生2名が参加しました。ブルーカーボンの概念には海藻養殖業も関係しており、特に今年度のアカデミー研修生は5名中4名がワカメ養殖に関係しています。本県ではブルーカーボンの概念は広く知られているとはいえませんが、国や水研機構が主体となって設立されたジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が中心となり、特にカーボンオフセット事業の概念や取り組みを全国に広げているところであり、今回のセミナーもその一環で実施されました。  新たに藻場造成を行うなどした場合、算定式により算出されたCO2吸収量をクレジットとして発行し、活動に賛同する企業等がそれを購入し、オフセットするとともにその活動を支援するカーボンオフセット事業の海洋版となります。海藻養殖の場合、収穫して陸上に上げ、食料に加工し最終的にCO2として排出されるため、海中で養殖している間に固定され海中に排出されたCO2のみが対象となるようです。今後、本県においても本格的な取組普及が考えられること、アカデミー研修生も海藻養殖や藻場造成活動等で何らかの形で係わっていく可能性が大いにあることから、アカデミーとしても次年度の研修項目にするなど、事務局で検討したいと考えています。

 開催案内及び次第
 会場の様子。研修生・卒業生も熱心に受講しました。


〇フォークリフト運転技能講習②(11/9-10、16-17)

 場所:徳島市東沖州 中央技能講習所株式会社
 参加研修生:専攻コース1名

 とくしま漁業アカデミーでは、漁業就業に役立つ資格取得を実施しており、その一環として、フォークリフト運転技能講習を研修生4名が令和6年8月に受講したところですが、参加できなかったI研修生が今月受講しました。
 漁業での陸上作業において、漁船から荷捌き施設への漁獲物や漁具・氷の漁船への運搬の際、最大荷重1トン以上のフォークリフトの運転・操作に従事する際に必要な資格となり、今後、本県で漁業者として従事していくうえで非常に重要な資格といえます。
 I研修生は11月9日に学科講義・試験を、11月10,16-17日の3日間実技実習を受講し、最終日に実技修了試験を受験し無事合格しました。

 受講会場遠景



〇とくしま漁業アカデミー第8期研修生 研修情報⑤

 取材日 令和6年11月11、18、22日
 場 所 阿南市椿泊町 椿泊漁港

 KH研修生は椿泊漁協で小型定置網やイセエビ刺網漁でインターンシップ研修中ですが、11月の研修状況について紹介します。
 現在、天気の良い日は小型定置網漁に加え、新月(闇夜)廻りはイセエビ刺網漁を実習しています。また、時間のある時は、タコカゴの補修、イセエビ刺網の補修や小型定置網の網洗浄実習と、忙しくしているようです。
 
 漁港でタコカゴを補修するKH研修生(R6.11.11)
 刺網の補修実習を行うKH研修生と大親方(親方の親方)(R6.11.18)
 小型定置網の洗浄実習風景。量が多く何日も作業が続いたようです(R6.11.22)
 徳島県では今だ珍しい小形の「テンジクタチ(別名:キビレタチ)」が小型底びき網により漁獲されたとのことで、漁協職員さんから調査研究用に受け取りました(写真下、R6.11.22)。温暖化の影響か、鹿児島や隣の高知県では普通のタチウオに代わり、現在テンジクタチが主流になってきているようです。豊洲市場等ではテンジクタチは通常のタチウオと変わらない単価で取引されるようです。激減したタチウオに代わり、本県でもテンジクタチが普通に漁獲され、漁業者の対象魚種になる日も近いかもしれません。
 イセエビ刺網や小型定置網により漁獲され荷捌き場に水揚げされたカワハギ類(R6.11.22)
同様に水揚げされたグレ、カサゴやタカノハダイなど(R6.11.22)
 同様に水揚げされたアイゴ(R6.11.22)。今年度、鮮魚出荷分以外のアイゴは駆除の意味合いも兼ね50円/kgで買い取られ、魚粉に加工する事業が水産関係団体により実施されています。
 延縄漁による秋サワラも多数水揚げされていました(R6.11.22)。



〇とくしま漁業アカデミー第8期研修生 研修情報⑥  情報提供  令和6年11月21日(木)  情報提供者 KT研修生  場  所  鳴門市北灘町 櫛木漁港  鳴門市北灘町櫛木地区で研修中のKT研修生から、現在のワカメ養殖の様子について情報をいただきました。今月は養殖枠へのイカリ打ち作業に始まり、浮子の作成・設置等養殖用ロープの張り込み準備を経て、水温等の関係から例年より遅れているようですが、11月20日頃からワカメ種糸のロープへの挟み込み(種付作業)、養殖用ロープの沖での縄張り作業を精力的に順次実施しているとのことです
 ワカメ種糸をロープに挟み込みやすいサイズにハサミで切っているところです。
 短く切ったワカメ種糸を、養殖用ロープに挟み込んでいきます。



〇卒業生が地元新聞に掲載されました! (R6.11.23徳島新聞)

 とくしま漁業アカデミー2期生の西内さんが、令和6年11月23日の徳島新聞「挑戦と成長」欄に掲載されました。西内さんは地域一番の若手漁師として頑張っています。




〇とくしま漁業アカデミーオープンキャンパス(県南コース)

 アカデミー入学希望者など、本県での漁業就業に興味のある方を対象に、次のとおりオープンキャンパス(県南コース)を開催しました。

 開催日時 令和6年11月24日(日) 6:00~8:50
 開催場所 海部郡海陽町 鞆浦漁協
 参加者  9名

 AM6時前より、鞆浦漁協河野組合長の案内で旧漁協事務所2階に移動し、模型を用いて大型定置網(現地名:大敷網)の説明を受けました。設置後の完成型は2段落とし網を陸側と沖側の2か所に設置するそうですが、漁期が今月始まったばかりであり、沖側の落とし網設置はこれからで、現在は陸側1か所を設置した状態との説明がありました。鞆浦大敷網は乗組員は通常本船13名、小型の中船(なかぶね)3名の計16名体制で漁を行っていますが、現在欠員があり、可能な限り組合長も乗り組んでいるそうです。当日は波は高くなかったが北風が強く、気温が急に下がると潮の流れが早くなる場合が多いそうで、21日(木)頃から上り潮(西から東向きの潮の流れ)が強い状態が続いており、上り潮が強いと網持ちできず、出戻りの可能性もあるとのことでした(当日は陸からは判断できず)。組合長の説明終了後、参加者は救命胴衣及びヘルメットを着用し、全員が本船に乗り込み6時過ぎに出港となりました。漁場は近く、港から5分程度で現場に到着しましたが、説明にあった通り、現場では上り潮が速く、目印(海面上に建てた竹)周辺の浮子が沈んでおり、網持ち不可能との判断で残念ながら出戻りとなりました。
 帰港後、組合長から漁港施設の説明を受けるとともに、小型定置網漁獲物(アオリイカやカンパチなど)の水揚げ作業や8:20からの入札を見学し、組合長にあいさつの後、解散となりました。
 当日は大敷網漁の見学・体験は残念ながらできませんでしたが、その他漁業の漁獲物や入札見学を実施することができました。
 最後に、快く対応いただいた河野組合長はじめ大敷網乗組員の方々、関係者の皆様にお礼申し上げます。

※鞆浦漁協に関係するHPがありますので、興味ある方はご参考下さい。
なお、鞆浦漁協の大敷網は一般の方でも体験漁業ができますので、興味ある方は是非ご体験下さい。



 模型を使って河野組合長に大敷網の説明をしていただきました。
 乗船した本船(通称:虹マンボウ)
 6時過ぎに本船に参加者全員が乗船し、出港しました。
 漁場到着も目印の浮子が沈んで見えず、船長により網持ち不可と判断し、残念ながら帰港となりました。
 帰港後、荷捌き所でイセエビ刺網の混獲物(ブダイ、グレなど)を見学しました。
 入札時間まで時間があったため、組合長に入札の方法を教えていただきました。
 小型定置網(つぼ網)で漁獲され水揚げされ入札を待つアオリイカ。近年アオリイカは不漁が続いており、今漁期も低調なようで単価は高いようです。
 



とくしま・丸ごと移住交流フェア(東京会場)に参加しました!

 令和6年11

 「とくしま・丸ごと移住交流フェア」(東京会場)が徳島県主催により実施された、事務局が参加しました。当該フェアは、徳島県単独で初めて開催され、「とくしま漁業アカデミー」のアピールと令和7年度の研修生募集活動を行いました。


〇とくしま・丸ごと移住交流フェア(東京会場)

 場所:東京都千代田区有楽町 東京交通会館12階
 日時:令和6年11月9日(土)11:30~16:00

 主に徳島県への移住を希望する参加者を募り、徳島県単独で当団体含む30団体が参加し、実施されました。農林水産関係は、とくしま漁業アカデミーのほか、林業・かんきつの各アカデミーも参加しました。当日は100名を超える参加者が来場し、会場ではすだちくんによる握手会や徳島県在住シンガーソングライターによるコンサートも実施されました。「とくしま漁業アカデミー」ブースには移住希望者のうち真剣に漁業就業を希望する者の来訪はありませんでしたが、本県水産業や水産物に興味のある者3名が来訪し、アカデミーの説明や本県水産物のPRを行いました。このようなフェアは毎回参加することによりPR効果が期待できることから、次回令和7年1月に開催予定の同フェア大阪会場含め、このようなフェアは引き続き参加していく必要があると考えます。また、今後のフェア等でのPR用に椅子カバーやハッピなど広報グッズを作成し、今回のフェアから活用しました。

 開会前に事務局からフェアの説明がありました。
 とくしま漁業アカデミーのブースです。椅子カバーやハッピ等で来訪者を出迎えました。



令和6年10月の漁業アカデミー


     令和6年10

 10月に入っても引き続き暑い日が続いており、台風も月初めの17号による影響が心配されましたが、沖合を通過し直接の被害はありませんでした。
 今月から研修生は、特定の漁業者を指導者(親方)として現場で漁業実習を行う半年間のインターンシップ期間に入りました。専攻コース2名はアカデミー入学時から決まっていた親方の下、一般コース3名はそれぞれ進路選択オリエンテーションでの実習を受けるなどして決定した親方の下、研修に取り組んでいます。なお、9月に予定していた日和佐町漁協でのイセエビ網漁実習は予定していた日に天候不良のため出漁できず、残念ながら今年度も中止となりました。
 漁業アカデミーでは、来期や今後の入学希望者の参考になるよう毎年オープンキャンパスを実施しており、今年度は北部コースを今月実施しました。


〇各研修生のインターンシップ(10月から翌年3月まで)

 専攻コース2名はそれぞれ堂浦漁協及び和田島漁協で、一般コース3名は北灘漁協(2名)及び椿泊漁協で実践的な研修に鋭意取り組んでいます。
 アカデミー事務局では今後、各研修生の研修状況について現地へ足を運んで取材し、研修生間で共有するとともに、情報発信していく予定です。

〇北灘漁協HP

〇北灘・堂浦漁協関係(鳴門市HP:鳴門市水産振興計画R4.3)
https://www.city.naruto.tokushima.jp/_files/00448291/suisanshinko.pdf

〇和田島漁協HP

〇椿泊漁協HP


〇とくしま漁業アカデミー第8期研修生 研修情報②

 取材日 令和6年10月11日(金)AM
 場 所 鳴門市北灘町 櫛木漁港

 10月から、専攻コース2名はそれぞれ堂浦漁協及び和田島漁協で、一般コース3名は北灘漁協(2名)及び椿泊漁協で実践的な研修に鋭意取り組んでいます。
 今回、北灘漁協櫛木地区を訪ね、当地で就業を予定している8期生のKT研修生に話を聞きました。KT研修生の親方は漁業アカデミー1期生の卒業生で、アカデミー卒業生が親方となる初めてのケースとなります。なお、すぐ近くでは先月取材した7期生のM卒業生も親方と作業を行っておりました。11月頃から沖出しが開始予定のワカメ養殖に関し、養殖用ロープの準備作業等をK研修生が精力的に行っておりました。10月を過ぎても暑い日が続いており、先月に引き続き作業は無理をせず朝の涼しい時間帯で実施しているとの話でした。この日の鳴門市北灘地区の地先水温は例年より高水温で推移しており、まだ25℃を上回っている状況で、種付け作業は遅れるだろうとの話でした。インターンシップ研修に入り、だいぶ作業も慣れてきたとのことでした。

 ワカメ養殖用ロープの準備作業を行うKT研修生
 ワカメ養殖用ロープの準備作業を行うM卒業生
 作業中のM卒業生の親方とK研修生


〇とくしま漁業アカデミーオープンキャンパス(県北コース)

 アカデミー入学希望者など、本県での漁業就業に興味のある方を対象に、次のとおりオープンキャンパス(県北コース)を開催しました。

 開催日時 令和6年10月19日(土)6:00~8:00
 開催場所 徳島市漁協
 参加者  5名(アカデミー受験予定者3名含む)  前日の判断で出漁可能となり、当日は5:30受付で津田漁港に現地集合で実施されました。参加者全員が揃った6時前より、主催者である県水産振興課担当からの説明のあと徳島市漁協林組合長の挨拶をいただきました。その後、組合長子息が船長を務める小型底びき網漁船に、組合長及び参加者が乗船しました。この日は天候が下り坂で、沖合は風が強くうねりも入りつつあるため、水深20m程度の近場を短時間操業することとなりました。6時頃出港し、漁港から東北東約3海里沖(和田島灯台沖北北東2海里あたり)に到着後、6:30頃から東側に向けて曳網を開始しました。船速約2.3knotで曳網し、約40分後の7:05頃から揚げ網を開始、10分程度で網揚げ作業が終了しました。作業の間、船長及び組合長の指示により、参加差は邪魔にならず安全な場所で見学を行ったあと、参加者は選別体験を行いました。今回の操業での漁獲物は、エソ2kg程度、シロ及びクロサバフグ10尾程度、アカカマス15尾程度、ボーゼ1尾、イトヨリダイ1尾、シリヤケイカ10杯程度、コウイカ1杯、カミナリイカ1杯、その他シュモクザメ幼魚及びトビエイ幼魚各1尾、ギンカガミ数匹、スナヒトデ10尾程度、ミズクラゲ1匹と、全体的にあまり漁獲がありませんでしたが、特に底びき網漁が初めての参加者は良い体験になりました。その後、8時過ぎに帰港し、挨拶の後、当初の予定より早く終了し解散となりました。当日は早めに切り上げたこともあり、天候が悪化する前に全ての予定を終えることができ、また、参加者もケガ等なく無事体験できました。  この場をお借りし、主催者である徳島県水産振興課、徳島市漁協林組合長、林船長、木下参事はじめ関係者の皆様にお礼申し上げます。

 県北コースの紹介パンフ
 実施前に水産振興課担当による概要説明と組合長による挨拶がありました。
 お世話になった小型機船底びき網漁船(11t)
 網入れ時の様子。組合長及び船長の指示により安全かつ操業の邪魔にならない場所で見学しました。
 曳網時の船首方向の風景。綺麗な朝日でした。
 網揚げ時の様子
 漁獲物の選別を体験しました。
 小さいシュモクザメも入網しました(このサイズは人に危害を与えません)。
 帰港後、挨拶をして現地解散となりました。


〇とくしま漁業アカデミー第8期研修生 研修情報③

 情報提供  令和6年10月
 情報提供者 KH研修生
 場  所  阿南市椿泊町

 10月から、専攻コース2名はそれぞれ堂浦漁協及び和田島漁協で、一般コース3名は北灘漁協(2名)及び椿泊漁協で実践的な研修に鋭意取り組んでいます。
 今回、椿泊漁協で小型定置網やイセエビ刺網漁でインターンシップ研修中のKH研修生から研修の状況が送られてきましたので紹介します。
 徳島県では漁業調整規則の規定により、9月15日からイセエビ漁が口開け(解禁)となります。イセエビ漁は満月廻りは網が見えるのかイセエビの掛かりが悪いのと、資源保護の意味合いもありどことも新月廻りで漁が行われます。今漁期は解禁日以降初めての新月が10月3日(旧暦9月1日)であり、地区によって異なりますが、概ね新月をはさんで前後10日ほどが漁期となります。今回は10月5日に網入れ、翌6日に網揚げの情報でした。今年の漁まずまずとのことですが、サイズが比較的大きいそうです。単価はインバウンド等の影響もあるのか、比較的高値とのことです。操業の無い日は刺網の補修や作成を親方に教えてもらい、鋭意作業しているとのことです。なお、椿泊漁協の小型定置網ではサバフグ類、コモンフグやシマフグ等フグ類もけっこう漁獲されることもあり、KH研修生は今年度の徳島県ふぐ処理師試験を受験するため、10月30日(水)に実施された「令和6年度第1回徳島県ふぐ処理師免許に係る講習」を受講しました。

 漁船に刺網を積んで漁場に向かっているところです。
 漁場に到着し、網を投入するところです。
 翌朝、再度漁場に向かい網を船上に引き揚げます。写真は網にかかったイセエビです。
 破れた個所の補修作業の様子です。8月の研修が早速役に立っています。
 刺網を作成している様子とのことです。
 ふぐ処理師に係る講習会案内。今年度の試験は翌年2月に実施予定とのことです。


〇とくしま漁業アカデミー第8期研修生 研修情報④

 情報提供  令和6年10月26日(土)
 情報提供者 KT研修生
 場  所  鳴門市北灘町 櫛木漁港

 鳴門市北灘町櫛木地区で研修中のKT研修生から、ワカメ養殖の沖での枠張り作業の様子について情報をいただきました。初日は地区の3軒が協力して、養殖枠を3枠張ったとのことでした。順調に作業が行われていますが、地先水温はまだ24℃を若干超えており、ワカメの種糸を挟み込んだロープの沖出しはしばらく後になりそうです。

 養殖枠の資材を船外機に積み込み出港するところです。
 漁場で養殖枠を張っているところです。
 養殖枠を張り終えたところです。船上からは浮子しか見えません。作業は写真のように風が無く凪いでいる日に行いますが、この日は少し潮が速かったとのことです。


〇第二級海上特殊無線技士試験

 漁船に搭載される無線機器は、電波を発信する漁業用無線機及びレーダーがあり、特に延縄、底びき網や船びき網など、海上を広く移動するような漁業を行うには必須の機器となっています。試験に合格し、国家資格である第二級海上特殊無線技士(略称:二海特)の資格を所有すれば、沿岸漁業で利用するほとんどの無線機器を活用することができるようになります。この第二級海上無線特殊技士試験について、10月末までに研修生5名中4名がCBT方式により受験し、うち2名が合格しました。
 勉強に使用した参考書
 徳島駅近くの徳島テストセンターが受験会場でした。
 合格者にはメールで合格通知が送られ、別途総務大臣(四国の場合、窓口は四国総合通信局)に対し免許申請を行います。その後申請者に対し免許証が交付されます。



令和6年9月の漁業アカデミー

 令和6年9

 9月に入っても変わらず暑い日が継続しています。本県では9月15日からイセエビ漁が解禁となり、一部地域で操業が開始されます。県南部での実習も予定しておりましたが、昨年に引き続き天候不良により延期となりました。今月は、和田島漁協でバッチ網などの実習を行い、先月座学を欠席した者に対する補講も行いました。


〇進路選択オリエンテーション6(和田島漁協 9/10~12)

 場所:小松島市和田島町
 内容:和田島漁協 カキ養殖、小型底びき網、瀬戸内海機船船びき網(バッチ網)実習
 参加研修生:一般コース3名、専攻コース2名(専攻コース1名は12日のみ参加)

 9月10日(火)から12日(木)に和田島漁協所属漁業者の指導の下、カキ養殖、小型機船底びき網及び瀬戸内海機船船びき網(通称:バッチ網)実習を行い、研修生4名が参加しました。
 今回は天候が良く、初日にオリエンテーション及びカキ養殖研修を実施し、11日に底びき網漁を、12日にバッチ網漁を実習させていただきました。なお、今年度は専攻コースT研修生が和田島のバッチ網漁業現場において前期から研修中であり、後期インターンシップもそのまま研修に入ることから、組合長・参事了解のもと、バッチ網での加工作業は研修生がお世話になっている「鳴宇水産」にお世話になりました。また、バッチ網操業についてはジャッカーが新しく広い「日漁丸」に、底びき網漁は昨年度お世話になった「幸進丸」に、カキ養殖についてはカキ部会の皆様にお世話になりました。研修概要は次のとおりです。

 9/10(火) 8:30~12:00  研修1日目
  カキ養殖研修、オリエンテーション
  参加研修生 一般コース3名、専攻コース1名

 和田島地区でのカキ養殖は、昨年度から底びき網漁業者10名が主体となってカキ部会を結成、試験養殖からスタートし、R5.9.1に県から漁協に区画漁業権が免許され、現在は漁業権区域内で養殖を実施しています。また、カキ部会関係者が主体となり、「岬オイスター合同会社」を組織し運営しています。この日は火曜日で底びき網漁が休漁で、関係者が早朝からカキ養殖関係の作業中とのことで、先にカキ養殖関係作業を見学しました。この日は漁協事務所裏側の漁具倉庫スペースを活用した作業場で作業を行っているとのことで、内部を見学させていただき、カキ部会に所属しているM漁業士に作業内容について説明していただきました。養殖方法や養殖に使用するカゴなどの説明を受けた後、作業場で専用ドリルを使いカキ殻に付着するフジツボ等の除去作業を見学しました。今年は船底、養殖カゴ、カキ本体、ロープ等あらゆる場所にフジツボその他(地域名称:セ)が大量に固着し、掃除作業の手間がものすごい状況との話でした。除去中のカキを見せてもらいましたが、”セ”が大量に固着しており、研修生から除去作業はかなり大変そうだとの意見がありました。また、補助事業を活用し、重量選別機及び回転式カキ稚貝選別機の導入を予定しており、効率化・規模拡大に向けた取り組みを進めているとのことでした。その後、漁船に乗船させていただき、海面に設置された養殖現場でカゴの反転作業を研修しました。ニュージーランド発本県初のフリップファーム式カキ養殖システムを導入し、養殖が行われています。当該方式は日本では大分県佐伯市大入島で初めて実施された方式で、フロートの付いたバスケットにシングルシード牡蠣種苗を入れて漁場に一直線に浮かせ、船外機に設置した専用の回転装置で定期的にカゴを回転・干出させる仕組みとなっています。強制的にカゴを反転させる仕組みのため、平穏な漁場でも効率的な養殖が可能となります。当日は船外機と専用の装置により効率よくカゴを反転させる作業を見せて頂くなどし、研修生は作業効率が手作業と比べ何倍も高いことを学びました。育成品は出荷されている以外に、毎週土曜日に漁協直売所「ちりめんの店」でも販売しているとのことです。  その後漁協事務所2階において、事務局から資料に基づき和田島漁協の概要や地区で行われている漁業概要について説明を行うとともに、チリメンやエビ類のもの知り図鑑を使い、追加説明を行いました。研修生は、和田島漁協の規模が大きいこと、漁業者が協力して新しいことに挑戦している姿に感心していました。
 和田島漁協カキ養殖漁場(区第144号)遠景。奥に海上自衛隊小松島基地が見えます。
 M漁業士からカキ養殖カゴの説明を聞く研修生
 掃除前のカキ(左)と固着物除去後のカキ(右)の説明をしていただきました。
 漁場に浮かぶカキ養殖カゴ
 カキ養殖カゴの反転作業を見学する研修生
 漁協事務所2階でのオリエンテーションの様子


 9/11(水) 0:00-8:00  研修2日目
  小形機船底びき網乗船研修
  参加研修生 一般コース3名、専攻コース1名

 研修2日目はM船長にお世話になり、「幸進丸」にて小型機船底びき網漁の研修を行いました。前月には播磨灘において北灘漁協所属底びき網漁船に乗船し研修を行いましたが、今回は紀伊水道での底びき網研修で、規則により漁場や馬力・操業方法が大きく異なり、より大規模な漁船での実習となりました。研修生にとっては同じ漁法でも、操業区域により規制が大きく異なること、漁船規模が大きいため操業時間、漁獲量が播磨灘に比べ長く多いことなど、その違いを実感でき大変良い経験になりました。この時期の和田島地区ではハモや小エビ狙いの夜間操業であり、だんだん漁が少なくなってきたことから、今後状況を見てボーゼ(イボダイ)狙いの昼びきに変更する予定とのことでした。研修時は天候があまり良くなく、夜中に出て明け方帰港の1番網のみの実施となりました。0時丁度頃に出港し、約30分程度航行、0:35に和田の鼻東側水深30m程度の地点から北北東に向け曳網を開始しました。約4時間曳網し、4:30網揚げ開始、約10分で袋網を船上に揚げ終えました。その後、同乗した今年3月卒業の卒業生の指導の下、選別作業台を設置し、網洗浄・帰港しながら漁獲物選別を実践しました。この日はハモ、ヒモタチ、小さなボーゼ、テンジクダイ(イシモチ)、コエビ、アシアカ、シラサ、ヒイカ等売り物にならないもの含め、全体で150kg程度漁獲されました。少ないとはいえ漁獲量は播磨灘に比べ多く、研修生も慣れない手つきでの選別で、多くの時間を要する大変な作業でした。ボーゼはまだ小さく値も安いため、手伝い来ていた漁業者がおかずで持ちかえっていました。主な漁獲量は、ハモ60kg、テンジクダイ9kg、コエビ約15kg、ヒイカ5kgなどでした。船長にはまだまだ暑い中、昨年に引き続き快く研修生を受け入れていただき大変お世話になりました。
    
当日の操業工程及び特記事項は次のとおりです。
 出港 → 漁場到着(0:33)→ 網入れ(1回目0:35)→ 曳網(約4時間)→
 網揚げ(4:30~10分程度)→ 漁獲物選別、網洗浄、帰港(5:22)→
 漁獲物選別(~7:30頃) → 陸揚げ・箱立て・出荷 → 解散(8:00)
 乗船させていただいた小型機船底びき網漁船「幸進丸」
 夜の徳島沖から一番目立つ「徳島津田バイオマス発電所」(写真真ん中の光る建物)
 漁場に到着し、網入れを行います。研修生は安全で邪魔にならない位置で見学しました。
 この日の曳網は約4時間と長く、曳網中は研修生や同乗したY卒業生が漁業等について色々話をしていました(Y卒業生とI研修生は同級生)。
 曳網後、網を巻き上げます。
 油圧装置を使って網を船上に引き揚げます。
 卒業生の指示のもと、研修生は選別台設置を手伝いました。
 帰港しながら研修生も全員が参加し選別作業を開始しました。
 選別中の様子で、カゴの中にはコエビ(アカエビ・トラエビ)が入っています。
 帰港後、多くの漁業者が手伝いに来ました(この日はバッチ網漁が休みのため、その関係者も多かったようです。)。
 選別された小エビ
 選別されたヒイカ(ヒメジンドウイカなど)
 選別されたイシモチ(テンジクダイ。岡山に出荷されます)
 ヒモタチや小さなボーゼはエソなどとともにつぶし(練り物)用に出荷されます。
 売り物にならないギンカガミも少量入網していました。
 選別後すぐさま箱詰めして計量し、出荷されました。


 9/12(木) 5:30-12:10  研修3日目
  瀬戸内海機船船びき網(バッチ網)乗船研修
  参加研修生 一般コース3名、専攻コース2名
  講師:日漁丸船長、鳴宇水産加工場関係者

 今回の研修は天候に恵まれ、3日目に予定通りバッチ網研修を行うことができました。和田島のバッチ網漁は昭和の初めに6統(統:船団の単位)から始まり、S27年に17統となった後、S50年頃に最大45統まで増加したが、H10年頃から減少し、現在25統となっています。本県のバッチ網漁は近年、安定した漁で漁獲物も高値安定傾向にあり、コロナ禍からコロナ明けにおいても比較的安定的な経営となっているのが特徴です。研修当日、I研修生は普段から研修中の金毘羅丸の逆網(さかあみ:進行方向向かって左側の網船)に普段通り乗船し、その他の研修生4名は船長の年齢かつ船齢が若く船体が大きい日漁丸のジャッカー(探索船兼運搬船のことで、本県では昔からこう呼ばれます。)に乗船することとなりました。この時期は6時出船で、5時半に停泊場所に集合しました。乗船させていただいた漁船はR3に建造した新しい漁船で、A船長は40代と若い気さくな親方でした。ブリッジも広く6名程度が十分座れる広さがあり、クーラーも完備し相当快適な作りとなっていました(近年、夏が暑すぎてエアコン完備の漁船がすごく増えているとのことです)。研修生は10分前に漁船に乗り組み、6時ちょうどに出船しました。和田島のバッチ網は全船が一斉に決められた時間に港を出るため壮観な出漁風景となります(令和7年度研修生募集ポスター・パンフも参照ください)。漁は盆明けにしばらく大漁が続き、現在は落ち着いている状況との話でした。この日は和田島から北側の吉野川沖を目指し航行し、魚群がちらほら魚探に写りだした6:40頃に吉野川沖東約4.5マイル辺りで網入れを行い、曳網を開始しました。この日は魚群があまり纏まってないようで、約2時間曳網し、8:50頃に1回目の網揚げを行いました。研修生はデッキに出て水揚げ作業を見学しました。日漁丸は効率的な先端網交換方式を導入しており、途中まで巻き上げた網を付け替え、網船はすぐさま2回目の曳網に入り、ジャッカーでは丁寧にシラス以外の浮いた小魚等をたも網で選別しながら水揚げを実施しました。フィッシュポンプで吸い上げ、船上へ水揚げ後、9時頃には水揚げが終了し、すぐさま全速力で港へ向かい、9:40頃帰港しました。帰港後、すぐさま取引先の加工業者のトラックへ積み込み作業を行いました。今回の1番網での漁獲量は20-25kg入りカゴで約20カゴ分、約0.5tの水揚げでまずまずとのことでした。今回の研修では1番網下船後にI研修生がお世話になっている鳴宇水産加工場で見学及び話を聞く予定になっており、A船長にお礼を言い、加工場に向かいました。

 この日の日漁丸操業工程は次のとおりです。
 出港 → ジャッカーによる魚群探索 → 網入れ(1回目)→ 曳網 → 網揚げ → 網入れ(2回目)・曳網+選別・水揚げ・運搬・トラック積込(この日は加工場見学のため、ジャッカーで帰港した時点で研修生は下船)
 当日は5:30に漁港に集合しました。
 乗船させていただいた日漁丸のジャッカー
 近くに停泊中の日漁丸の網船です。
 この日は25統75隻が一斉に出港しました。
 ジャッカーの中の様子です。親方がジャッカーに乗り組み、無線等で網船に指示を出します。研修生は漁の話などを教えていただきました。
 バッチ網漁の図解。ジャッカー(運搬兼探索船)1隻と網船2隻(進行方向右側が真網(まあみ)、左側が逆網(さかあみ))で操業します。
 曳網中の逆網(進行方向左側の網船)
 2時間程度曳網した後、網船がジャッカーに接近し、水揚げ作業が行われます。
 網の先端の袋網をジャッカーから取込み、水揚げ準備を行う。フィッシュポンプで吸い上げる前に浮いたサルパなどの夾雑物を出来る限り丁寧にたも網で掬いとります。
 夾雑物を取り除いた後、フィッシュポンプでシラスを吸い上げ、専用の装置で海水をきり魚槽へ入れます。
 漁獲直後のカタクチシラスで、サイズは20-30mm程度で細くモノは良いが混ざりが多そうとのことでした。
 袋網手前のシャク取り部に入網したシラスは粗く混ざりが多いので、分けて水揚げされます。
 帰港後、すぐさま加工業者に引き渡されました。

 車で港を出て、約5分程度走った海沿いで漁獲されたシラスをチリメンに自家加工している鳴宇水産加工場にお伺いしました。I研修生が漁船の乗組員として研修中です。加工場では女性4名が作業しており、加工場長である漁協女性部長に全体説明をしていただきました。鳴宇水産加工場は和田島地区の加工場で、漁獲から加工・製品化を一貫して行っています。なお、現在和田島地区では漁獲から加工まで行う自家加工業者は9軒とのことです。この日の漁獲物は、乗船させていただいた日漁丸同様夾雑物が多めとのことで、特に釜揚げには向かない”トゲ”と呼ばれる1cm程度の細長くとがった「ウキヅノガイ」が良く見るとけっこう入っており、この日の漁獲物はチリメンに加工されていました。加工場では手際よく作業が行われており、水揚げされすぐさま加工場に運ばれたシラスは、洗浄されてから釜揚げし、粗で水気をとったうえで風により異物除去・水分除去され(この時点がいわゆる”釜揚げ”)、全自動乾燥機に運ばれてから乾燥され、チリメンとなります。研修生は加工現場を見学させていただきながら、熱心に話を聞いていました。最後にこの日獲れたチリメンの試食もさせていただき、良い経験になりました。最後に研修生はチリメンを1パックづつお土産でいただき、挨拶の後加工場研修は終了となりました。
 加工場の風景
 漁獲されたシラスはすぐさま釜揚げ機で茹で上げられます。
 茹で上げ直後のシラス
 茹で上げ後、風により粗熱をとり、軽い異物が除去されます。
 その後全自動乾燥機に運ばれ、乾燥されます。研修生は熱心に説明を聞いていました。
 全自動乾燥機で乾燥されたチリメン
 機械乾燥後のチリメンの一部は、加工場横広場で海風に吹かれ天日干しされていました。
 いただいたチリメンに入っていたいわゆる「チリモン」です。確かにウキヅノガイが結構入っていました。和田島漁協では毎年10月に「ちりめん市」を開催しており(今年は10月20日)、「チリモン探しイベント」も毎回行われています。

 最後に漁協事務所にお伺いし、組合長に研修生全員から研修報告を行いました。
 この場をお借りし、組合長、参事をはじめ、研修でお世話になった漁業者ほか漁協関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。


〇座学補講(9/18)
 場所:徳島市東沖州 水産会館 第1研修室  参加研修生:一般コース1名、専攻コース1名

 8月22、23及び26日に実施された座学(漁業制度ほか、エンジン・オイル、漁業機器、ロープ・網、無線試験対策など)について、欠席した研修生2名に対し、資料に基づき事務局から補講を行いました。補講に参加した研修生は熱心に受講しました。
(※写真はありません。)


〇とくしま漁業アカデミー第7期卒業生 長期研修情報①

 取材日 令和6年9月19日(木)AM
 場 所 鳴門市北灘町 櫛木漁港

 令和6年3月に卒業した第7期生6名のうち、1名が同月から北灘漁協櫛木地区で親方の下、長期研修に入っております。
 櫛木漁港を訪ねたところ、11月頃から沖出しが開始されるワカメ養殖に関し、漁具の整理やロープの補修作業等をM卒業生が精力的に行っておりました。9月半ばを過ぎても猛暑が続いており、作業は無理をせず朝の涼しい時間帯で実施しているとの話でした。今後、養殖枠や種付用ロープの準備、錨や浮子のメンテナンスなど、本格的な種付け・沖出し作業までに順次準備作業をこなしていく必要がありますが、長期研修に入り、だいぶ作業も慣れてきたとのことで頼もしい限りです。
 櫛木漁港の作業場風景
 M卒業生は、作業小屋の日陰でワカメ養殖に必要なロープの補修等を慣れた手つきで行っていました。


〇とくしま漁業アカデミー第8期研修生 研修情報①

 取材日 令和6年9月20日(金)AM
 場 所 小松島市和田島町 和田の鼻東側

 所用で小松島市和田島地区に行った際、海岸付近で操業中のバッチ網漁船を見かけ、I研修生に確認したところ、丁度研修生本人が研修中の漁船とのことで、陸から操業中の写真を撮らせていただき、スマートフォンで漁模様を聞き取りました。この日はぼちぼちの漁模様の様で、写真のあたりは水深15m程度の浅場とのことで、この日は他の漁船も沿岸部を曳網しているようでした。
 県水産研究課が毎週火曜日に公表し、翌水曜日に地元徳島新聞に掲載される1週間分の「漁海況ニュース」の翌週9月24日版には、紀伊水道でシラスが43.3t(1日1統あたり586kg)漁獲されたとあり、漁はまずまずのようです。

 ※徳島県農林水産総合技術支援センター水産研究課HP「漁海況速報」
  https://www.pref.tokushima.lg.jp/tafftsc/suisan/information/week/5045395/

 I研修生が研修で乗船している漁船の網船(I研修生は写真手前の逆網に乗船とのこと)
 徳島新聞9/25版に掲載された漁海況ニュース