令和5年6月
徳島県沿岸ではハモ漁などが最盛期を迎え、内陸の清流では若鮎の踊る季節となりました。研修生も精力的に実習等に取り組んでいます。
〇進路選択オリエンテーション2(伊座利漁協 6/6~9)
場所:海部郡美波町伊座利
内容:伊座利漁協 大型定置網(大敷網)実習
参加研修生:一般コース3名
台風3号及び前線の影響が懸念されましたが、初日のオリエンテーションのあと、大敷網は7日から9日の3日間操業し、3日とも乗船研修を行うことが出来ました。大敷網は現在8名で操業しており、港から10分程度で到着する場所に大敷網が設置されています。
漁1日目は、水揚げに必要な氷や水槽等資材を積み込み出港、漁場到着後、すぐさま親方の合図で順番に落とし網を揚げていき、揚げ終わると、入網した魚等をタモで掬い、選別後、活け間や水槽に用途や出荷先ごとに分けて入れる作業を行いました。現場では洋上での定置網の効率的な選別や活け締め作業及び水揚げ作業を学び、帰港後の陸上作業では、漁獲物の選別のほか、捌き方など六次産業化の取組も勉強させていただきました。
漁2日目も同様に大敷網の一連の作業を学びました。大敷網研修終了後、漁業者が収穫したアラメの乾燥作業の手伝いをさせていただき、海藻収穫・一次加工の内容を学びました。また、空き時間に台風で陸揚げしていた網の一部(金庫網)の補修作業の実習も行いました。
漁3日目は大敷網実習終了後、浜にペットボトル等が多く打ち上げられており、「浜を綺麗に保つことも漁業者の重要な仕事」とのことから、研修生による浜掃除を実施し、無事4日間の研修を終えることが出来ました。研修生は漁獲だけでなく、漁業や漁村に関する多くの内容を学んだ良い研修になったと思います。
この場をお借りし、4日間早朝からご指導いただいた大敷水産有限会社社長ほか乗組員の皆様、伊座利漁協関係者の皆様に心より厚くお礼申し上げます。
漁協組合長及び大敷水産社長から説明を受ける研修生
出漁前に必要資材を積み込みます。
大敷網漁場に到着し、網の引き揚げ作業がはじまりました。
網を手繰り寄せ、徐々に網を船に引き寄せます。
漁獲物は手すくいのほか、マリンクレーンも使用し効率的に船上に揚げます。
当日の漁獲物の一部(トビウオ類、ヨコスジフエダイ、カワハギなど)
マアジ、マサバを使って〆作業の実習も行いました。
漁獲物の選別実習。種類・サイズ・用途別に仕分け作業を行います。
空き時間には網の修繕作業も実習しました。陸上に引き上げた金庫網の破れ箇所を見つけ、目印をした後、修繕します。
地区の漁業者が収穫したアラメ(サガラメ)の天日干し前の下処理作業実習も行いました。
アラメ(サガラメ)の天日干しの風景です。研修生は炎天下の中の大変な作業を実感しました。
〇進路選択オリエンテーション3(椿泊漁協 6/19~23)
場所:阿南市椿泊
内容:椿泊漁協 延縄・小型定置網実習
参加研修生:一般コース3名
①タチウオ延縄漁実習 19日 (月)17~21時
延縄部会会長の指導の下、タチウオ延縄漁に同行させていただきました。漁船にはGPS、魚探、レーダー等多くの機器が搭載されており、使い方や漁での役割を詳しく説明いただきました。日没と同時に投縄し、餌の付け方、投縄方法等を学びました。タチウオ漁の場合、投縄の際は海流と船の進む方向を同じにし(つれ潮)、揚げ縄の際は海流と船の進む方向を逆にする(さか潮)とのことで、この日は入れ終わった方向から揚げ縄を実施しました。途中研修生が交代で縄揚げを経験し、巻上機のクラッチ操作、縄の繰り方や餌のはずし方などを学びました。紀伊水道におけるタチウオ延縄漁について、出港から帰港までの一連の作業を実地で体験することができました。
延縄部会会長からタチウオ延縄の餌や付け方、縄の投入方法等を学びました。
ラインホーラーによる取込みを実習する研修生。素早く手を動かし同時に足の操作も必要なため、慣れるまで相当経験を積む必要があります。
漁獲された銀色に輝くタチウオ
②ハモ延縄漁実習 20日(火)14時~21日(水)4時半
2日目は研修生3名が3隻に分かれてハモ延縄漁の実習を行いました。研修生乗船の3隻は餌の活アジを漁船に積み込むため、14時頃出船し各自の小割で活アジを積み込み、紀伊水道でのハモ漁を実施しました。ハモ縄は夕方投縄、日没後揚縄開始(投縄順から揚縄)、選別・計量等作業が翌AM3時半開始のため、それに間に合うようAM2時頃には帰港する必要があります。それぞれ研修生を乗せた延縄漁船は翌AM1時頃までに帰港、3時半から水揚げ作業を実習しました。漁船が帰港した順に漁獲物を漁協職員がサイズ選別、計量、伝票記入を実施し研修生も各乗船した親方の作業を手伝いました。昨年に比べハモの水揚量は半分程度とのことでしたが、アガリを含めるとかなり多く、現在、仮設荷捌所で手狭なため、限られた時間の中で漁業者が協力しスピーディに作業を実施していました。紀伊水道におけるハモ延縄漁について、出港から帰港、出荷までの一連の作業を実地で体験することができました。
ラインホーラーで縄を手繰り、掛ったハモは後方から船上へ素早く安全に水揚げします。
漁獲されたハモの水揚げ実習
夜中の水揚げ作業。現在荷捌き所が仮設で手狭なため、関係者が協力して迅速に作業を実施していました。
水揚げされた活ハモ。船毎に漁獲物の傷や状態を判断し、状態の良いもののみサイズ別に選別されます。
計量実習の様子です。仕分けられたハモはサイズごとに計量し、活魚水槽へ入れられます。
※同日、NHK「うまいッ!」取材班が別船に乗船し、ハモをテーマに7月17日(月)に放送されました。
③小型定置網(底定置)実習
21日(水)PMの座学では、講師の漁師さんから、椿泊地区で行われている底定置網について、椿泊地区での定置網漁の歴史、独自の底定置の漁法確立の過程から、経営体数・操業ルール・漁獲される魚種など詳しく丁寧に教えていただきました。
現場での実習(23日(金)AM7~9時半)は、天候不良により予備日に実施しました。定置網は一旦網を設置すれば日々の操業時間は他の漁に比べ短く、また、漁模様に応じ出漁調整するなど効率的な漁が行える利点があります。当日は研修生3名が漁船に乗り込み、約15分で漁場に到着後、網揚げ作業及び活け間への取り込み作業を実習しました。漁獲物は小アジが多く、ハモ縄の餌として最適サイズだったため、水揚げ時に活け間上で専用の網を用いて選別し、その他漁獲物は活け又は鮮魚で選別しました。網揚げ後、延縄漁業者設置の小割生け簀に向かい、研修生は小割への搬入作業を体験しました。その後、荷捌き所にてその他漁獲物の水揚げ作業を行いました。
研修生にとって底定置網は初めて見る漁法で、定置網でも異なる漁法があることを学び、また、定置網漁と延縄漁の関係など、違った漁業種間の有機的なつながりなども学ぶことが出来、大変有意義な研修となりました。
漁場で魚が入網する”つぼ網”の部分を引き上げる作業を実習する研修生
漁獲物の取込み実習
専用網で効率的に選別されたハモ延縄の餌用小アジ(この日はほぼマアジ)。元々椿泊地区の定置網漁は、延縄漁の餌を確保するために始められた漁という話もあります。
研修生が餌用小アジを沖合に設置された延縄業者の小割に入れているところです。活力を保つため下部が袋状のタモ網で海水ごと掬うため、掬い方やタモの持ち方などコツをつかんで能率的に作業する必要があります。 最後にこの場をお借りし、5日間熱心にご指導いただいた延縄部会会長ほか椿泊漁協関係者の皆様に心より厚くお礼申し上げます。