令和5年8月
今年も記録的な暑さとなっていますが、これまで順調に研修が実施できています。今月は資格取得講習と座学研修を中心に行いました。
〇玉掛け技能講習(8/7、8、10)
場所:徳島市東沖州 中央技能講習所株式会社
参加研修生:一般コース3名、専攻コース2名
とくしま漁業アカデミーでは、漁業就業に役立つ資格取得を推進しており、その一環として、マリンピア内にある中央技能講習所株式会社において、玉掛け技能講習を研修生5名が受講しました(受講可能年齢に達していない研修生1名は別途受講予定)。
玉掛け技能は、定置網や養殖においてつり上げ荷重1トン以上のクレーンや移動式クレーンを使って資材や網等を吊り上げる際、フックを資材に掛けたり外したりする玉掛け作業を行う際に必要となる重要な資格となっています。研修生は8月7、8日の2日間学科講義を受け、10日に実技実習を受講し最後に実技試験を受けました。当日は台風6号の影響で実施が危ぶまれましたが、雨の中、屋外での実技講習も無事終了、全員が合格し修了証が交付されました。
〇食品衛生責任者養成講習(8/9)
場所:徳島市南末広町 中央テクノスクール「ろうきんホール」
参加研修生:一般コース3名、専攻コース3名
漁業就業に役立つ資格取得の一環として、食品衛生責任者養成講習会を研修生6名(7期生全員)が受講しました。漁家で水産物の加工等(干物製造など)を行う場合、許可に加え事業を行う際に食品衛生責任者を配置する必要があり、当資格は必須の資格となります。主に「食品衛生責任者ハンドブック」を用いて食品衛生学、食品衛生法、公衆衛生学及び食品表示等、食品衛生に関係する講義が10時から17時(途中1時間休憩含)までみっちり行われ、受講後その場で全員に修了証明書が交付されました。
受講会場
会場の風景。研修生の他、大勢受講していました。
受講した研修生6名
受講に使用した資料。メインテキストは「新訂 食品衛生責任者ハンドブック 第2版」で250ページあり、このテキストで食品衛生に関するほぼ全てが網羅されています。〇県庁及び県漁連職員による座学(8/22)
場所:徳島市東沖州 水産会館 第1研修室
参加研修生:一般コース3名、専攻コース2名
とくしま漁業アカデミーの座学研修の一環で、漁業に必要な幅広い範囲の知識の習得のため、県庁水産振興課、漁業管理調整課及び徳島県漁連の皆様を講師として各種講義を実施し、研修生5名が参加しました(1名は所用のため欠席)。
内容は次のとおりで、各講師の皆様には大変お世話になり、心よりお礼申し上げます。
①徳島県の水産業について(9:30~10:10)
講師:徳島県農林水産部水産振興課振興・流通担当 門野主任主事
全国に占める本県漁業の位置付け、新規漁業就業者の動向のほか、水産物流通に関する話題について分かりやすく説明いただきました。
②漁業関係法令(漁業法など)について(10:20~11:00)
講師:徳島県農林水産部漁業資源調整課調整・漁船担当 枝川係長
漁業法に基づく漁業権制度、漁業許可制度、特定水産動植物に関すること、水産物の採捕制限や遊漁者に認められている漁具・漁法のほか、遊漁船業及び水産流通適正化に関する制度を分かりやすく説明いただきました。内容が重要かつ漁業法改正・新法制定等により知っておくべき内容が大幅に増加・複雑化していることを学びました。
③資源管理について(10:20~11:00)
講師:徳島県農林水産部漁業資源調整課調整・漁船担当 吉田主任主事
資源管理の基礎知識や国が進める「新たな資源管理」のほか、本県を代表する水産物である「ハモ」及び「イセエビ」の本県における資源管理の優良事例について、分かりやすくかみ砕いて説明いただきました。
④水産業協同組合法・漁業協同組合について
講師:徳島県農林水産部水産振興課団体指導担当 西岡主任
水協法や法に基づき設立される漁協が担う幅広い役割や組合員制度について、分かりやすく丁寧に説明いただきました。
⑤漁業就業の心構え、漁港・漁場など漁業全般
講師:徳島県漁業協同組合連合会 大塚主任
漁業を営む上で大切なこと(安全・健康第一、お金と信用の話、情報収集力と人脈の大切さ)、人間は命をいただき、漁業は命をいただく産業かつ食物連鎖の中で行われていること、豊かな海とは何か等、漁業を行う上で大切な総論的なことのほか、申告書を用いた漁家経営収支、税金の話、海の栄養塩の話、県内漁港の高度衛生管理荷捌き所の整備やフェリー耐震岸壁を事例とした南海トラフ巨大地震の話など多岐にわたり、これから漁業を営むうえで重要な話を盛り沢山していただきました。
⑥アカデミー研修生への支援金説明
講師:(公財)徳島県水産振興公害対策基金 和田
今年度第7期研修生に関する支援事業(国・県)について説明がありました。今年度は国支援金については4名の研修生が、県支援金については親元就業を予定している2名の研修生が活用予定となっており、必要書類の書き方や提出期限について説明を受けました。
国支援金申請に必要な研修計画書様式
〇漁船エンジン・オイルに関する座学(8/23 AM)
場 所:徳島市津田海岸町 阿波ヤンマー株式会社
講 師:阿波ヤンマー株式会社関係者
参加者:一般コース3名、専攻コース3名
安全かつ効率的な操業を営むには、漁船に搭載されたエンジンの構造や性質を熟知し、定期的なメンテナンスを行うことがとりわけ重要となってきます。また、エンジン駆動に欠かせないオイルに関する知識も重要です。このことから、阿波ヤンマー株式会社のご厚意により、漁船エンジン及びオイルについて講義いただきました。7期生6名全員が参加し、特に漁船で多用されるディーゼルエンジンの構造や部品の役割について資料を元に説明いただくとともに、同社工場において分解中の実機を見ながらエンジンの構造等について詳しく説明いただきました。また、オイルの役割についても資料に基づき特に重要な役割について説明いただきました。加えて、エンジンの値上がりによりエンジン・オイルの定期点検、メンテナンスがこれまで以上に大切になっていること、海水使用のため電蝕対策部品は特に定期的に点検・交換することがいかに大切か、との点を強調して話していただきました。
この場をお借りし、快く講義を行っていただきました阿波ヤンマー株式会社の皆様に心よりお礼申し上げます。
ディーゼル機関及びオイルの知識を学びました。
作業現場ではメンテナンス中のディーゼルエンジンを見本に各部位の役割等を教えて頂きました。
〇GPSプロッターや魚群探知機など漁船搭載機器に関する座学(8/23 PM①)
場 所:徳島市東沖州 水産会館 第1研修室
講 師:古野電機株式会社西日本支社徳島営業所関係者
参加者:一般コース3名、専攻コース3名
とくしま漁業アカデミーの座学研修の一環で、漁業に必要な幅広い範囲の知識の習得のため、座学「GPSプロッター、魚群探知機、レーダー等の仕組みについて」を実施し研修生6名全員が参加しました。
安全かつ効率的な操業を営むには、航海計器類を十分理解し的確に使いこなすことが重要です。このことから、例年、古野電機が製造・販売する機器を用いた講習を古野電機西日本支店徳島営業所に実施いただいており、緯度・経度の測地系や電波の基本的な知識、GPSプロッター、魚群探知機、レーダー、AIS(Automatic Identification System:船舶自動識別装置)の原理と使い方について詳しく講義していただきました。
GPSプロッターで利用する測地系は、主に世界測地系と日本測地系があり、同じ数字でも表示する位置が大きく異なり、世界測地系から南東へ300-500mずれた点が日本測地系の緯度経度になることから、本県でも相手の示す測地系を確認することが特に漁船漁業を行う上で重要となります(県下漁業現場では両方が混在するうえ、さらに古いロランC測地系の数字を使っている地区もあります。)。また、延縄漁などで重要なレーダーは、今後研修生が受検予定の第二級海上特殊無線技士の資格が必要な機器となっており、研修生は熱心に講義を受けていました。
最後に、快くアカデミー生の研修を受諾いただいた古野電機株式会社の皆様に心よりお礼申し上げます。
〇ロープ及び漁網に関する座学(8/23 PM②)
場 所:徳島市東沖州 水産会館 第1研修室
講 師:網秀商店有限会社社長
参加者:一般コース3名、専攻コース3名
とくしま漁業アカデミーの座学研修の一環で、漁業に必要な幅広い範囲の知識の習得のため、座学「ロープと漁網についての基礎知識講座」を実施しました。
効率的な操業を行うには、機敏で的確に網の修繕やロープワークを行うことが重要であることから、漁網やロープの扱い等に熟知している網秀商店社長にロープと漁網についての基礎知識を教わりました。研修生は、ロープ及び漁網の実物を見ながらの講義を受けるとともに、実技としてロープ先端の輪作り(さつま結び:別称アイスプライス)と蛙又編みによる漁網の修繕方法を教わりました。漁網の構造では、目合い、カット方法、縮結(いせ)が重要なことを学びました。ロープでは、特に「さつま結び」は漁師に必須の作業であり、研修生が教えあいながら、最終的に研修生全員がマスターすることができました。時間がある者は、漁網の修繕方法も熱心に手取り足取り教えていただきました。当講義は予定していた時間を超過し、途中で講義を終了させないと、いつまでも続くのではと思われるほど、研修生は熱心に取り組んでいました。
最後に、長時間丁寧に教えていただいた網秀商店社長に心よりお礼申し上げます。
〇第二級海上特殊無線技士試験に関する講義及び実機実習(8/24 10~16時)
場 所:徳島県立徳島科学技術高校、阿州丸(マリンピア停泊場所)
講 師:徳島県立徳島科学技術高校 記本教諭
参加者:一般コース3名、専攻コース3名
とくしま漁業アカデミーの座学研修の一環で、漁業に必要な幅広い範囲の知識の習得のため、座学「第二級海上特殊無線技士試験に関する法規・工学講義」を行いました。
漁船に搭載される無線機器は、電波を発信する漁業用無線機及びレーダーがあり、特に延縄、底びき網や船びき網など、海上を広く移動するような漁業を行うには必須の機器となっています。試験に合格し、第二級海上特殊無線技士(略称:二海特)の資格を所有すれば、沿岸漁業で利用するほとんどの無線機器を活用することができるようになります。
今回の講義では、問題の半分ずつを占める法規及び無線工学について、テキストを用いて分かりやすく解説いただくとともに、2期分の過去問の模擬試験を実施し、出題傾向や間違いやすい問題の詳しい解説をしていただきました。また、より知識を深めるため、水産会館近くに停泊中の科技高実習船「阿州丸」に移動し、無線機やレーダーの実機を用いて使い方や注意点の説明を受けました。阿州丸には遭難時に遭難信号等を無線発信する「レーダートランスポンダ」が搭載されており、この機器を扱うにも二海特資格が必要とのことで、実機を用いた講習は、研修生にとってとても有意義な研修となりました。
二海特資格はこれまでは筆記試験方式でしたが、近年、CBT(Computer Based Testing)方式による随時申し込みによる特定会場でのパソコン受検に変更となり、今後進捗状況に応じて研修生が各自申し込んで受検することとなりました。研修生は今回の講義内容や過去問、必要に応じ市販テキストなどを使用し勉強に励み、本番の試験にそなえることになります。
最後に、長時間丁寧に教えていただいた徳島県立徳島科学技術高校 記本教諭に心よりお礼申し上げます。
マリンピア停泊中の阿州丸。奥にとくしま漁業アカデミー事務局が入る「徳島県水産会館」が見えます。
阿州丸内でレーダーや無線機の説明熱心に聞く研修生
二海特免許が必要なレーダートランスポンダの説明もしていただきました。