令和6年9月
9月に入っても変わらず暑い日が継続しています。本県では9月15日からイセエビ漁が解禁となり、一部地域で操業が開始されます。県南部での実習も予定しておりましたが、昨年に引き続き天候不良により延期となりました。今月は、和田島漁協でバッチ網などの実習を行い、先月座学を欠席した者に対する補講も行いました。
〇進路選択オリエンテーション6(和田島漁協 9/10~12)
場所:小松島市和田島町
内容:和田島漁協 カキ養殖、小型底びき網、瀬戸内海機船船びき網(バッチ網)実習
参加研修生:一般コース3名、専攻コース2名(専攻コース1名は12日のみ参加)
9月10日(火)から12日(木)に和田島漁協所属漁業者の指導の下、カキ養殖、小型機船底びき網及び瀬戸内海機船船びき網(通称:バッチ網)実習を行い、研修生4名が参加しました。
今回は天候が良く、初日にオリエンテーション及びカキ養殖研修を実施し、11日に底びき網漁を、12日にバッチ網漁を実習させていただきました。なお、今年度は専攻コースT研修生が和田島のバッチ網漁業現場において前期から研修中であり、後期インターンシップもそのまま研修に入ることから、組合長・参事了解のもと、バッチ網での加工作業は研修生がお世話になっている「鳴宇水産」にお世話になりました。また、バッチ網操業についてはジャッカーが新しく広い「日漁丸」に、底びき網漁は昨年度お世話になった「幸進丸」に、カキ養殖についてはカキ部会の皆様にお世話になりました。研修概要は次のとおりです。
9/10(火) 8:30~12:00 研修1日目
カキ養殖研修、オリエンテーション
参加研修生 一般コース3名、専攻コース1名
和田島地区でのカキ養殖は、昨年度から底びき網漁業者10名が主体となってカキ部会を結成、試験養殖からスタートし、R5.9.1に県から漁協に区画漁業権が免許され、現在は漁業権区域内で養殖を実施しています。また、カキ部会関係者が主体となり、「岬オイスター合同会社」を組織し運営しています。この日は火曜日で底びき網漁が休漁で、関係者が早朝からカキ養殖関係の作業中とのことで、先にカキ養殖関係作業を見学しました。この日は漁協事務所裏側の漁具倉庫スペースを活用した作業場で作業を行っているとのことで、内部を見学させていただき、カキ部会に所属しているM漁業士に作業内容について説明していただきました。養殖方法や養殖に使用するカゴなどの説明を受けた後、作業場で専用ドリルを使いカキ殻に付着するフジツボ等の除去作業を見学しました。今年は船底、養殖カゴ、カキ本体、ロープ等あらゆる場所にフジツボその他(地域名称:セ)が大量に固着し、掃除作業の手間がものすごい状況との話でした。除去中のカキを見せてもらいましたが、”セ”が大量に固着しており、研修生から除去作業はかなり大変そうだとの意見がありました。また、補助事業を活用し、重量選別機及び回転式カキ稚貝選別機の導入を予定しており、効率化・規模拡大に向けた取り組みを進めているとのことでした。その後、漁船に乗船させていただき、海面に設置された養殖現場でカゴの反転作業を研修しました。ニュージーランド発本県初のフリップファーム式カキ養殖システムを導入し、養殖が行われています。当該方式は日本では大分県佐伯市大入島で初めて実施された方式で、フロートの付いたバスケットにシングルシード牡蠣種苗を入れて漁場に一直線に浮かせ、船外機に設置した専用の回転装置で定期的にカゴを回転・干出させる仕組みとなっています。強制的にカゴを反転させる仕組みのため、平穏な漁場でも効率的な養殖が可能となります。当日は船外機と専用の装置により効率よくカゴを反転させる作業を見せて頂くなどし、研修生は作業効率が手作業と比べ何倍も高いことを学びました。育成品は出荷されている以外に、毎週土曜日に漁協直売所「ちりめんの店」でも販売しているとのことです。
その後漁協事務所2階において、事務局から資料に基づき和田島漁協の概要や地区で行われている漁業概要について説明を行うとともに、チリメンやエビ類のもの知り図鑑を使い、追加説明を行いました。研修生は、和田島漁協の規模が大きいこと、漁業者が協力して新しいことに挑戦している姿に感心していました。
M漁業士からカキ養殖カゴの説明を聞く研修生漁場に浮かぶカキ養殖カゴ
9/11(水) 0:00-8:00 研修2日目
小形機船底びき網乗船研修
参加研修生 一般コース3名、専攻コース1名
研修2日目はM船長にお世話になり、「幸進丸」にて小型機船底びき網漁の研修を行いました。前月には播磨灘において北灘漁協所属底びき網漁船に乗船し研修を行いましたが、今回は紀伊水道での底びき網研修で、規則により漁場や馬力・操業方法が大きく異なり、より大規模な漁船での実習となりました。研修生にとっては同じ漁法でも、操業区域により規制が大きく異なること、漁船規模が大きいため操業時間、漁獲量が播磨灘に比べ長く多いことなど、その違いを実感でき大変良い経験になりました。この時期の和田島地区ではハモや小エビ狙いの夜間操業であり、だんだん漁が少なくなってきたことから、今後状況を見てボーゼ(イボダイ)狙いの昼びきに変更する予定とのことでした。研修時は天候があまり良くなく、夜中に出て明け方帰港の1番網のみの実施となりました。0時丁度頃に出港し、約30分程度航行、0:35に和田の鼻東側水深30m程度の地点から北北東に向け曳網を開始しました。約4時間曳網し、4:30網揚げ開始、約10分で袋網を船上に揚げ終えました。その後、同乗した今年3月卒業の卒業生の指導の下、選別作業台を設置し、網洗浄・帰港しながら漁獲物選別を実践しました。この日はハモ、ヒモタチ、小さなボーゼ、テンジクダイ(イシモチ)、コエビ、アシアカ、シラサ、ヒイカ等売り物にならないもの含め、全体で150kg程度漁獲されました。少ないとはいえ漁獲量は播磨灘に比べ多く、研修生も慣れない手つきでの選別で、多くの時間を要する大変な作業でした。ボーゼはまだ小さく値も安いため、手伝い来ていた漁業者がおかずで持ちかえっていました。主な漁獲量は、ハモ60kg、テンジクダイ9kg、コエビ約15kg、ヒイカ5kgなどでした。船長にはまだまだ暑い中、昨年に引き続き快く研修生を受け入れていただき大変お世話になりました。
当日の操業工程及び特記事項は次のとおりです。
出港 → 漁場到着(0:33)→ 網入れ(1回目0:35)→ 曳網(約4時間)→
網揚げ(4:30~10分程度)→ 漁獲物選別、網洗浄、帰港(5:22)→
漁獲物選別(~7:30頃) → 陸揚げ・箱立て・出荷 → 解散(8:00)
漁場に到着し、網入れを行います。研修生は安全で邪魔にならない位置で見学しました。
この日の曳網は約4時間と長く、曳網中は研修生や同乗したY卒業生が漁業等について色々話をしていました(Y卒業生とI研修生は同級生)。
油圧装置を使って網を船上に引き揚げます。
卒業生の指示のもと、研修生は選別台設置を手伝いました。
帰港しながら研修生も全員が参加し選別作業を開始しました。
選別中の様子で、カゴの中にはコエビ(アカエビ・トラエビ)が入っています。
帰港後、多くの漁業者が手伝いに来ました(この日はバッチ網漁が休みのため、その関係者も多かったようです。)。
選別された小エビ 選別されたヒイカ(ヒメジンドウイカなど)
選別されたイシモチ(テンジクダイ。岡山に出荷されます) ヒモタチや小さなボーゼはエソなどとともにつぶし(練り物)用に出荷されます。 売り物にならないギンカガミも少量入網していました。 選別後すぐさま箱詰めして計量し、出荷されました。
9/12(木) 5:30-12:10 研修3日目
瀬戸内海機船船びき網(バッチ網)乗船研修
参加研修生 一般コース3名、専攻コース2名
講師:日漁丸船長、鳴宇水産加工場関係者
今回の研修は天候に恵まれ、3日目に予定通りバッチ網研修を行うことができました。和田島のバッチ網漁は昭和の初めに6統(統:船団の単位)から始まり、S27年に17統となった後、S50年頃に最大45統まで増加したが、H10年頃から減少し、現在25統となっています。本県のバッチ網漁は近年、安定した漁で漁獲物も高値安定傾向にあり、コロナ禍からコロナ明けにおいても比較的安定的な経営となっているのが特徴です。研修当日、I研修生は普段から研修中の金毘羅丸の逆網(さかあみ:進行方向向かって左側の網船)に普段通り乗船し、その他の研修生4名は船長の年齢かつ船齢が若く船体が大きい日漁丸のジャッカー(探索船兼運搬船のことで、本県では昔からこう呼ばれます。)に乗船することとなりました。この時期は6時出船で、5時半に停泊場所に集合しました。乗船させていただいた漁船はR3に建造した新しい漁船で、A船長は40代と若い気さくな親方でした。ブリッジも広く6名程度が十分座れる広さがあり、クーラーも完備し相当快適な作りとなっていました(近年、夏が暑すぎてエアコン完備の漁船がすごく増えているとのことです)。研修生は10分前に漁船に乗り組み、6時ちょうどに出船しました。和田島のバッチ網は全船が一斉に決められた時間に港を出るため壮観な出漁風景となります(令和7年度研修生募集ポスター・パンフも参照ください)。漁は盆明けにしばらく大漁が続き、現在は落ち着いている状況との話でした。この日は和田島から北側の吉野川沖を目指し航行し、魚群がちらほら魚探に写りだした6:40頃に吉野川沖東約4.5マイル辺りで網入れを行い、曳網を開始しました。この日は魚群があまり纏まってないようで、約2時間曳網し、8:50頃に1回目の網揚げを行いました。研修生はデッキに出て水揚げ作業を見学しました。日漁丸は効率的な先端網交換方式を導入しており、途中まで巻き上げた網を付け替え、網船はすぐさま2回目の曳網に入り、ジャッカーでは丁寧にシラス以外の浮いた小魚等をたも網で選別しながら水揚げを実施しました。フィッシュポンプで吸い上げ、船上へ水揚げ後、9時頃には水揚げが終了し、すぐさま全速力で港へ向かい、9:40頃帰港しました。帰港後、すぐさま取引先の加工業者のトラックへ積み込み作業を行いました。今回の1番網での漁獲量は20-25kg入りカゴで約20カゴ分、約0.5tの水揚げでまずまずとのことでした。今回の研修では1番網下船後にI研修生がお世話になっている鳴宇水産加工場で見学及び話を聞く予定になっており、A船長にお礼を言い、加工場に向かいました。
この日の日漁丸操業工程は次のとおりです。
出港 → ジャッカーによる魚群探索 → 網入れ(1回目)→ 曳網 → 網揚げ → 網入れ(2回目)・曳網+選別・水揚げ・運搬・トラック積込(この日は加工場見学のため、ジャッカーで帰港した時点で研修生は下船)
乗船させていただいた日漁丸のジャッカー
近くに停泊中の日漁丸の網船です。
この日は25統75隻が一斉に出港しました。
ジャッカーの中の様子です。親方がジャッカーに乗り組み、無線等で網船に指示を出します。研修生は漁の話などを教えていただきました。
バッチ網漁の図解。ジャッカー(運搬兼探索船)1隻と網船2隻(進行方向右側が真網(まあみ)、左側が逆網(さかあみ))で操業します。
曳網中の逆網(進行方向左側の網船)
2時間程度曳網した後、網船がジャッカーに接近し、水揚げ作業が行われます。
網の先端の袋網をジャッカーから取込み、水揚げ準備を行う。フィッシュポンプで吸い上げる前に浮いたサルパなどの夾雑物を出来る限り丁寧にたも網で掬いとります。
夾雑物を取り除いた後、フィッシュポンプでシラスを吸い上げ、専用の装置で海水をきり魚槽へ入れます。
漁獲直後のカタクチシラスで、サイズは20-30mm程度で細くモノは良いが混ざりが多そうとのことでした。
袋網手前のシャク取り部に入網したシラスは粗く混ざりが多いので、分けて水揚げされます。
帰港後、すぐさま加工業者に引き渡されました。
漁獲されたシラスはすぐさま釜揚げ機で茹で上げられます。
茹で上げ直後のシラス
茹で上げ後、風により粗熱をとり、軽い異物が除去されます。
全自動乾燥機で乾燥されたチリメン
機械乾燥後のチリメンの一部は、加工場横広場で海風に吹かれ天日干しされていました。
いただいたチリメンに入っていたいわゆる「チリモン」です。確かにウキヅノガイが結構入っていました。和田島漁協では毎年10月に「ちりめん市」を開催しており(今年は10月20日)、「チリモン探しイベント」も毎回行われています。
2時間程度曳網した後、網船がジャッカーに接近し、水揚げ作業が行われます。
網の先端の袋網をジャッカーから取込み、水揚げ準備を行う。フィッシュポンプで吸い上げる前に浮いたサルパなどの夾雑物を出来る限り丁寧にたも網で掬いとります。
夾雑物を取り除いた後、フィッシュポンプでシラスを吸い上げ、専用の装置で海水をきり魚槽へ入れます。
漁獲直後のカタクチシラスで、サイズは20-30mm程度で細くモノは良いが混ざりが多そうとのことでした。
袋網手前のシャク取り部に入網したシラスは粗く混ざりが多いので、分けて水揚げされます。
帰港後、すぐさま加工業者に引き渡されました。
車で港を出て、約5分程度走った海沿いで漁獲されたシラスをチリメンに自家加工している鳴宇水産加工場にお伺いしました。I研修生が漁船の乗組員として研修中です。加工場では女性4名が作業しており、加工場長である漁協女性部長に全体説明をしていただきました。鳴宇水産加工場は和田島地区の加工場で、漁獲から加工・製品化を一貫して行っています。なお、現在和田島地区では漁獲から加工まで行う自家加工業者は9軒とのことです。この日の漁獲物は、乗船させていただいた日漁丸同様夾雑物が多めとのことで、特に釜揚げには向かない”トゲ”と呼ばれる1cm程度の細長くとがった「ウキヅノガイ」が良く見るとけっこう入っており、この日の漁獲物はチリメンに加工されていました。加工場では手際よく作業が行われており、水揚げされすぐさま加工場に運ばれたシラスは、洗浄されてから釜揚げし、粗で水気をとったうえで風により異物除去・水分除去され(この時点がいわゆる”釜揚げ”)、全自動乾燥機に運ばれてから乾燥され、チリメンとなります。研修生は加工現場を見学させていただきながら、熱心に話を聞いていました。最後にこの日獲れたチリメンの試食もさせていただき、良い経験になりました。最後に研修生はチリメンを1パックづつお土産でいただき、挨拶の後加工場研修は終了となりました。
加工場の風景漁獲されたシラスはすぐさま釜揚げ機で茹で上げられます。
茹で上げ直後のシラス
茹で上げ後、風により粗熱をとり、軽い異物が除去されます。
全自動乾燥機で乾燥されたチリメン
機械乾燥後のチリメンの一部は、加工場横広場で海風に吹かれ天日干しされていました。
いただいたチリメンに入っていたいわゆる「チリモン」です。確かにウキヅノガイが結構入っていました。和田島漁協では毎年10月に「ちりめん市」を開催しており(今年は10月20日)、「チリモン探しイベント」も毎回行われています。
最後に漁協事務所にお伺いし、組合長に研修生全員から研修報告を行いました。
この場をお借りし、組合長、参事をはじめ、研修でお世話になった漁業者ほか漁協関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。
〇座学補講(9/18)
場所:徳島市東沖州 水産会館 第1研修室
参加研修生:一般コース1名、専攻コース1名
8月22、23及び26日に実施された座学(漁業制度ほか、エンジン・オイル、漁業機器、ロープ・網、無線試験対策など)について、欠席した研修生2名に対し、資料に基づき事務局から補講を行いました。補講に参加した研修生は熱心に受講しました。
(※写真はありません。)
〇とくしま漁業アカデミー第7期卒業生 長期研修情報①
取材日 令和6年9月19日(木)AM
場 所 鳴門市北灘町 櫛木漁港
令和6年3月に卒業した第7期生6名のうち、1名が同月から北灘漁協櫛木地区で親方の下、長期研修に入っております。
櫛木漁港を訪ねたところ、11月頃から沖出しが開始されるワカメ養殖に関し、漁具の整理やロープの補修作業等をM卒業生が精力的に行っておりました。9月半ばを過ぎても猛暑が続いており、作業は無理をせず朝の涼しい時間帯で実施しているとの話でした。今後、養殖枠や種付用ロープの準備、錨や浮子のメンテナンスなど、本格的な種付け・沖出し作業までに順次準備作業をこなしていく必要がありますが、長期研修に入り、だいぶ作業も慣れてきたとのことで頼もしい限りです。
〇とくしま漁業アカデミー第8期研修生 研修情報①
取材日 令和6年9月20日(金)AM
場 所 小松島市和田島町 和田の鼻東側
県水産研究課が毎週火曜日に公表し、翌水曜日に地元徳島新聞に掲載される1週間分の「漁海況ニュース」の翌週9月24日版には、紀伊水道でシラスが43.3t(1日1統あたり586kg)漁獲されたとあり、漁はまずまずのようです。
※徳島県農林水産総合技術支援センター水産研究課HP「漁海況速報」
https://www.pref.tokushima.lg.jp/tafftsc/suisan/information/week/5045395/
徳島新聞9/25版に掲載された漁海況ニュース