令和6年6月の漁業アカデミー

  令和6年6

 6月となり、9日には四国地方で梅雨入りとなりました。近年は6月になると真夏の暑さで、今年も早い夏が訪れています。暑くじめじめした季節ですが、研修生は引き続き実地研修や資格取得を精力的にこなしていきます。


〇進路選択オリエンテーション2(伊座利漁協 6/4~7)

 場所:海部郡美波町伊座利
 内容:伊座利漁協 大型定置網(大敷網)及びアラメ乾燥実習
 参加研修生:一般コース2名
 6月4日(火)から7日(金)まで伊座利漁業協同組合及び大敷水産有限会社関係者の指導の下、大型定置網(大敷網)とアラメ乾燥作業の実習に研修生2名が参加しました。
 初日は天気も良く、絶好の風条件で、現場集合時に収穫されたアラメ(正式名称:サガラメ)を関係者が天日干し作業を行っていたため、オリエンテーションを後回しにして、早速手伝いを行うこととなりました。全国的にアラメは食害や温暖化により減少傾向にあり、今は各地から引き合いがあるようで、資源量と手間の許す限り注文に応じる状況で、この日も刈れるだけ漁場から刈り取られ、漁港の空きスペースでの天日干し研修をさせていただきました。17:30頃まで作業が行われ、その後宿泊場所にてオリエンテーションを実施し、この日の研修は終了となりました。
 研修期間中天候は良く、大敷網は5日から7日の3日間操業し、3日とも乗船研修を行うことが出来ました。伊座利地区の大敷網は8名で操業しており、港から10分程度で到着する場所に設置されています。アカデミー7期生1名も今年の3月から長期研修中で、鋭意作業に取り組んでおりました。研修中の漁獲のメインはイサキやブリのほか、延縄の活餌用の豆アジやイワシ類で、3日間とも生け簀や漁場で近隣の椿泊漁協の延縄漁業者への受け渡しが行われました。活餌を使う延縄漁業などは特に近隣での活餌入手は非常に重要で、この頃は全国的にもカツオ一本釣りの活餌も入手困難だったようで、前月には高知県の大型カツオ一本釣り漁船が活餌を買いに来たほどだったとのことでした。研修生も見学したり活餌の受け渡しを体験させていただき、単に漁獲するだけでなく、様々な漁業とも関係していることを学びました。また、研修生は大敷水産が運営するおさかな食堂「弘伸丸」での六次化研修を行ったり、大敷網の洗浄実習を行ったり、空き時間には毎日アラメ天日干し実習を行いました。

 今年の研修は実施日全て天気が良く、充実した研修となりました。この場をお借りし、組合長をはじめとする伊座利漁業協同組合関係者の皆様、4日間早朝からご指導いただいた大敷水産有限会社社長ほか乗組員の皆様に心より厚くお礼申し上げます。

 伊座利漁港の風景
 漁場から刈って来て陸揚げされたアラメ(サガラメ)
 茎を切りとったアラメを漁港の空きスペースで天日干しを行う。この日は絶好の日よりでした。
 カラカラに乾燥したアラメを集めているところ。
 初日の作業終了後、宿泊所にてオリエンテーションを行いました。
 大敷網の網揚げ風景です。伊座利地区では1隻で操業します。研修生も参加させていただきました。
 水揚げされた直後の選別前の漁獲物
 活餌となる豆アジ(写真は鮮魚として一部水揚げしたもの)
 漁船の活け間に入れれるだけ活餌用豆アジを入れ、酸欠にならないよう総出で海水の循環を確保しているところ
 急ぎ帰港し、漁港内に設置された小割(生けす)に活餌用豆アジ等を水たも(袋付きで海水ごと掬うたも網)を使って素早く移します。
 小割から活餌を延縄漁船に運び入れます。写真の延縄漁師さんは令和4年度に漁業アカデミーを卒業した後継者で、独立に向け親元で精力的に漁を行っているとのことで頼もしい限りです。
 帰港後、漁船に搭載されたマリンクレーンを使って漁獲物を陸揚げします。
 陸揚げされた漁獲物は関係者総出で台の上で選別されます。研修生も実習させていただきました。
 鞆浦に引き続き網の洗浄も実習させていただきました。

〇玉掛け技能講習(6/10、11、13)

 場所:徳島市東沖州 中央技能講習所株式会社
 参加研修生:一般コース2名、専攻コース1名 計3名
 とくしま漁業アカデミーでは、漁業就業に役立つ資格取得を推進しており、その一環として、マリンピア内にある中央技能講習所株式会社において、玉掛け技能講習を研修生3名が受講しました(入学前に資格取得済みの研修生2名は受講せず)。
 玉掛け技能は、定置網や養殖においてつり上げ荷重1トン以上のクレーンや移動式クレーンを使って資材や網等を吊り上げる際、フックを資材に掛けたり外したりする玉掛け作業を行う際に必要となる重要な資格となっています。研修生は6月10、11日の2日間学科講義を受け、13日に実技実習を受講し、最後に実技試験を受けました。今年は屋外での実技講習日は晴天で気候も良く、全員が無事修了・合格となり、最後に修了証が交付されました。
 学科受講風景
 実技で説明を聞く研修生(一般の受講生とともに受講)
 実技講習中の参加研修生


〇フノリ集荷場見学(6/11)

 県下各地で春先から5月頃まで収穫されるフノリについて、県漁連のご厚意で集荷場に県下漁協から出品されている収穫物の見学をさせていただきました。近年、国産の海藻類は減少の一途をたどっているようであり、フノリも全国的にかなり減ってきており貴重な存在のようです。
 徳島県下で採取された品質の良いフノリは、約20kgずつ大袋に入れられ、へぎそばのつなぎ原料用として食用出荷されるとのことです。

 実施日 6月11日(水)
 会 場 徳島県水産会館(徳島市東沖州)
 参加者 一般コース1名

 集荷場全景
 乾燥し袋に詰められたフノリ
 フノリを見学する研修生

〇進路選択オリエンテーション3(椿泊漁協 6/17~21)

 場所:阿南市椿泊町
 内容:椿泊漁協 延縄・小型定置網実習、アカデミー卒業生等との意見交換会
 参加研修生:一般コース2名
 6月17日(月)から21日(金)まで、研修生2名が参加し、椿泊漁協所属漁業者(世話役の延縄部会会長ほか)の指導の下でオリエンテーション、ハモ延縄漁業及び小型定置網(底定置)実習を行いました。今回は現場での漁業実習のほか、昨年度に引き続き漁業アカデミー卒業生ほか若手漁業者との意見交換会も実施しました。
 概要は次のとおりです。
オリエンテーション
 初日、漁協事務所2階において、とくしま漁業アカデミー講師である延縄部会会長から、資料に基づき椿泊漁協の概要、延縄部会の説明、行われている漁業種類、主に水揚げされる魚種等のほか、今回の現地実習全般の注意点や本日午後以降の予定について説明いただきました。また、天候が良いため、この日の夕方、ハモ延縄漁実習を実施していただけることとなりました。 ②椿泊漁港・漁船見学  ハモ延縄実習が17:30からの出漁となり、時間に余裕があったため、椿泊漁港及び漁船の見学及び説明(特に高度衛生管理型荷さばき所の建設等)を行いました。途中、アカデミー7期生が長期研修で乗り組む延縄漁船を見かけ確認したところ、活餌用小アジの尾切りのため、小割に向かうために出港したところとのことでした。椿泊でも早速実地研修している卒業生の姿を見かけることが出来ました。
③ハモ延縄漁(短縮操業)
 初日の夕方、停泊中の延縄漁船に集合・乗船し、活アジの入った小割に向かい、講師の説明を聞き、必要量を積み込みました。通常ならばその場で小アジの尾ビレを切断する作業を行うそうですが、今回は投縄時にその作業を行いました。漁場は太平洋側、漁場到着後、すぐさま投縄が開始されました。紀伊水道内では連合会所属漁業者が順番を決めて沖で投縄場所を決定するそうですが、今回の場所は紀伊水道外のため、そのような作業はしないようです。投縄は電子トローリング装置でクラッチを滑らせて速度を落として行われ、1鉢投縄10分、回収30分が基本で、この日は5鉢分投縄しました。昨年の研修で実施したタチウオ延縄漁では、投縄の際は海流と船の進む方向を同じにし(連れ潮)、揚げ縄の際は海流と船の進む方向を逆にする(逆潮)方法が基本とのことでしたが、ハモ縄はあまり気にしなくてよいそうです。揚縄は20:00頃から開始し、ある程度縄を揚げた後、研修生も縄揚げでの一連の作業(巻上機のクラッチ操作、縄の繰り方や漁獲物のはずし方・活け間への入れ方など)を経験させていただきました。本命のハモはそこそこ釣れ、その他外道でクロサバフグ、エソやアオハタ等が針にかかっていました。21:20頃全ての縄を揚げ、帰港し、この日は解散となりました。通常のハモ漁は今回の倍ほどの数の投縄・揚縄を行い、日をまたいで実施されるようで2日目以降に別の船で実習する予定です。この日、研修生は椿泊におけるハモ延縄漁について、出港から帰港までの一連の作業を実地体験することが出来ました。
 オリエンテーションの様子
 漁港に停泊している延縄漁船(写真左の漁船でハモ延縄実習を実施)
 活餌用小アジが入った小割で餌を漁船に積み込みました。餌の小アジは各漁業者が地元や伊座利など近隣の定置網漁業者から入手するようですが、近隣にない時は和歌山県など他県まで買いに行くこともあるそうです。
 漁場で講師に話を聞く研修生
 活餌のハリへの付け方や投入方法を学びました。
 参加した研修生も実際に縄揚げを経験させていただきました。写真は研修生がハモを釣り上げたところです。
 徳島県沿岸では比較的珍しいアオハタも釣れました。

 研修2・3日目は、研修生2名が2隻に分かれ、通常操業のハモ延縄漁の実習を行いました。1名はアカデミー5期生が長期研修中の漁船に、もう1名は6期生(漁家子弟)が乗船する漁船で実習を行うこととなり、引率の事務局担当も7期生が長期研修中の漁船に乗り組み取材させていただきました。
 現在、椿泊では15隻程度の延縄船がハモ狙いで出漁中とのことで、乗船した3隻は餌の活アジを漁船に積み込むため14時頃出船し、各自の小割で活アジを積み込み、尾切り作業を行った後、紀伊水道内の各漁場で漁を実施しました。漁場は出漁船や班の順番により無線で場所決めを行い、日が暮れてきた18:30頃から縄入れが開始となりました。事務局が乗船した漁船にはこの3月末にアカデミーを卒業したばかりとは思えない卒業生が慣れた手つきで作業を行っており、大変感心しました。20時過ぎから縄揚げを行い、ほぼ外道なく多数のハモを釣り上げ、24:30に帰港、25:00(翌AM1時)に水槽搬入を終え、3:30の選別開始まで一旦解散となりました(研修生2名が乗船した漁船も各々帰港)。3:30に再集合し、組合職員が素早くサイズ選別、計量、伝票記入を実施していきました。その間、ハモ以外の外道やアガリハモの水揚げ、計量を別途実施し、研修生も各乗船した親方の下、体験させていただきました。アガリを含めるとこの日は割と多く(1隻あたり100-200kg程度)ハモが漁獲されたとのことです。4:30頃、約1時間でハモ縄での水揚げ・選別・計量作業が終了しました。その後同漁協所属の底びき網漁船が次々に帰港し、水揚げ作業を見学し、5:00頃に終了となりました。研修生は水揚げまでの一連の作業を全て体験することが出来ました。
 活餌の小アジの下準備をするアカデミー卒業生とその親方
 漁場で投縄中の卒業生。手慣れた手つきで作業を行っており、大変感心しました。
 次々とハモを釣り上げる卒業生。この日は比較的漁が良かったとのことです。
 ハモ以外の外道はあまりいませんでしたが、ハモと同じような砂泥地で生息し、時にハモの餌となるエンコウガニが何匹か針にかかってきました。
 選別前に荷捌き所の水槽に入れられた活ハモ
 漁協職員によるハモの選別作業。延縄で漁獲されたハモは1尾ずつ人の目と手で選別が行われます。
 研修生は活ハモの計量も手伝いました。
 アガリのハモは計量後、氷の入ったパンライト水槽に入れられます。

 研修3日目の午後は、漁協事務所2階にて底定置網漁(小型定置網)の説明を小型定置網、建網及びタコ籠漁を行う講師からしていただき、主に椿泊地区で行われている底定置について学びました。令和4年度までは椿泊漁協での現地研修は延縄漁のみでしたが、研修生の雇い入れを検討しているとのことで、昨年度から研修を実施いただいています。なお、今年度研修生のうち、一般コース研修生1名が椿泊地区で就業を希望しており、10月からのインターンシップ研修でお世話になる可能性があります。

 翌日の4日日には、研修生2名と事務局担当が作業船に乗り込み、底定置網漁の実地研修を行いました。出港後、定置漁場へ向かいましたが、講師が網を設置している漁場は近場の内湾2か所のため、約15分程度で漁場に到着しました。この時期は漁が多くないため、1、2日毎に網揚げを行っているとの話でした。当日は2統分(つぼ網左右2か所×2統)の網揚げを実施しました。研修生は網揚げ作業や活け間への取り込み作業を体験しました。漁獲物は小アジが多く水揚げされ、ハモ縄の餌になるため、水揚げ時に専用の網で船上で選別しました。その他漁獲物は活け又は鮮魚として選別しました。なお、売り物にならない小魚やウミヘビは再放流せず、タコ籠用の餌として有効活用するそうです。網揚げ後、延縄漁業者が設置する小割に向かい、2軒に活アジを搬入しました。研修生は小割への搬入作業を体験しましたが、伊座利漁協での方法と同様、袋付き網で海水ごと掬う必要があるため、慣れないと見た目以上に相当大変な作業とのことでした。 その後、荷捌き所にてその他漁獲物の水揚げ作業を行いました。研修生にとっては定置網でも底定置は初めて見る漁法で、同じ定置網でも漁場や対象魚により漁法が異なることを学び、また、漁獲物を無駄なく利用することも学び、有意義な研修となりました。
 講師から底定置の仕組みについて詳しく説明いただきました。
 漁船に乗り組み、漁場に向かいます。この日は曇っていましたが、海面はべた凪でした。
 漁場で定置網に設置されたつぼ網(魚取部)を船上に引き揚げます。
 網に入った獲物はたも網ですくいあげ、船上で選別されます。
 延縄用の小アジがまとまって漁獲されたため、丁寧に選別されました。
 混獲されたウミヘビやバリ子(小形アイゴ)などは、タコ籠用の餌として有効活用するとのことでした。
 注文分を延縄漁業者が設置する小割に搬入しました。この作業は慣れないとかなりの重労働で、コツをつかんでの作業が重要です。
 椿泊漁協仮設荷捌き所遠景
 その他のマダイやヒラメなどの漁獲物を漁協事務所横の仮設荷捌き所に水揚げし、一連の作業が終了しました。


 最終日は昨年に引き続き、参加研修生と卒業生含む4名の若手延縄漁業者との意見交換会を実施していただき、ざっくばらんに意見交換が行われました。講師及び若手漁業者から、漁業技術、独立に当たっての漁船・住居確保・資金面の苦労話のほか、今年卒業した研修生のリアルな漁船リースのリース料に関する話は、参加した研修生のみならず、その他若手漁師も驚きをもって聞いていたのが印象的でした。昨年に引き続き研修生から、意見交換会はとてもためになったとの意見が聞かれました。
 アカデミー卒業生ほか若手漁業者からとてもためになる話をしていただきました。

 今年の研修は椿泊漁協でも実施日全て天気が良く、充実した研修となりました。この場をお借りし、組合長をはじめとする椿泊漁業協同組合関係者の皆様、5日間ご指導いただいた延縄部会会長である紀伊水道延縄連合会会長、個別指導いただいた漁業者の皆様に心より厚くお礼申し上げます。


〇BS朝日「魚が食べたい!」にとくしま漁業アカデミー卒業生が出演しました!

 番組名 BS朝日「魚が食べたい!~地魚さがして3000港~」
     #178 徳島県出羽島漁港
 放送日 令和6年6月19日(水) 21:00~21:54

 当該番組は全国の多くの漁業者が視聴している番組で、第178回放送分は徳島県海部郡牟岐町出羽島が取り上げられ、とくしま漁業アカデミー2期生の西内さんが出演されました。番組内ではとくしま漁業アカデミーの取り組みについても紹介していただきました。
第178回放送分
 https://www.bs-asahi.co.jp/fish_eat/lineup/prg_178/

 なお、同番組では過去に次のとおり徳島県下の漁港が取り上げられておりますので、ご紹介しておきます。
第66・67回放送分 海陽町鞆奥漁港(R4.1.26、R4.2.2放送)
 https://www.bs-asahi.co.jp/fish_eat/lineup/prg_066/
 https://www.bs-asahi.co.jp/fish_eat/lineup/prg_067/
第122回放送分 阿南市椿泊漁港(R5.4.19放送)
 https://www.bs-asahi.co.jp/fish_eat/lineup/prg_122/